IC Insightsによると、2021年の半導体IC市場をファブレスとIDMで分けると、IDMの年間成長率は前年比21%増であったのに対し、ファブレスは同36%増と大きく伸びたという。

基本的にファブレスICサプライヤの方がIDMに比べて市場成長率が高く、例外として2010年、2015年、2017年、2018年の4年のみ、IDMの方が成長率が高い年となっている。

また、2017年~2018年に沸いたメモリバブルの崩壊以降、2019年~2021年の3年間で、IDMとファブレスの成長格差が顕著となったが、2021年については、業績が低迷するIntelをIDMのリストから除いた場合、同29%増と成長率が高まることとなるという。ただし、TSMCへの製造委託ができなくなり、売上高が急落したHiSiliconの業績をファブレス側から除外した場合、同44%となる点にも注意する必要があるとIC Insightsでは説明している。

  • ファブレス/システムIC設計企業とIDMの前年比売上高増減率の推移

    ファブレスIC設計企業とIDMの前年比売上高増減率の推移 (出所:IC Insights)

ファブレス企業は高い成長率を背景にIC市場での存在感を年々高めてきており、2003年にはIC市場全体の14%ほどであったが、2019年のメモリバブル崩壊以降、急速にその存在感を高めてきており、2019年には29.9%に到達。2021年は、ファブレス企業各社の売り上げが伸びたことから、IC市場全体に占めるファブレス企業のシェアは34.8%(1777億ドル)と過去最高を記録したという。また、IC Insightsでは長期的に見ても、ファブレス/ファウンドリの存在感が高まるとしており、少なくとも今後5年間は市場全体の30%台後半を維持し続けるものと予測している。

  • IC市場に占めるファブレスIC設計企業の売上高の割合の移位

    IC市場に占めるファブレスIC設計企業の売上高の割合の移位 (出所:IC Insights)

なお、こうしたファブレスIC企業の売上高ランキングトップ10には、米国、台湾、中国といった各国の企業が名を連ねているが、日本企業の名前が挙がったことはほとんどない。日本最大のファブレスは、富士通とパナソニックのシステムLSI設計部門の流れをくむソシオネクストと考えられるが、同社は日本の半導体企業売上高ランキングのトップ10にようやく入る規模であり、こうしたこともあり、日本のファブレス企業の売上高合計は、世界ファブレス売上高合計の1%未満に留まっている。日本では現在、実際に製造を担当するファウンドリの誘致が注目されがちであるが、その工場を活用するためには、多くのファブレス企業が育つ土壌の整備が必要であろう。