明治大学(明大)は7月8日、飲食物の味と見た目を変える装置「TTTV2」を開発したことを発表した。
同成果は、明大総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明教授らの研究チームによるもの。研究成果の詳細などについては、9月1~3日に福知山公立大学で開催される情報処理学会「エンタテインメントコンピューティング2022」にて発表される予定だという。
TTTV2は、Transform The Tasteand Visualappearanceの略で、直訳すれば「味と見た目を変更する」といった意味となる。総務省「異能vationプログラム」で宮下教授が開発した味覚メディア「味わうテレビTTTV」を発展させたもので、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の基本五味と、辛味(痛覚と温度覚の複合的な感覚で味覚には含まれない)などの味を感じさせる液体を混合噴霧することで、味をコントロールすることができる。噴霧する対象は、TTTV1のときは透明フィルムであったものを、TTTV2では、飲食物へと変更したという。
元の飲食物の味と見た目を、目標の飲食物のものに変えるためには、まず元飲食物Aと目標飲食物Bを味覚センサーで測定し、味の差(B-A)を算出。味溶液を噴霧混合しながらこの味の差を元飲食物Aにかけることで、目標飲食物Bの味に近づけていくほか、可食インクの印刷によって見た目も目標飲食物Bに近づける仕組みだという。
出力例として、今回成功したというのが、牛乳(元飲食物)をカニクリームコロッケ(目標飲食物)と同じ味と見た目にするというもので、甲殻類のアレルゲンとなる物質が含まれないため、甲殻アレルギーの人でも安全にカニの味を楽しめるという。
なお、苦味溶液に含まれる炭酸カリウムによってpHがアルカリ性となることで、牛乳にもともと含まれているアミン系化合物が揮発し、魚介類・甲殻類の香りを生み出しているとのことで、これにより、香料を加えることなく、味と見た目に加えて、香りまでもカニクリームコロッケに類似させることができているとする。
このほか、TTTV2では、白おにぎりを梅干しおにぎりに変えたり、白米をちらし寿司に変えたりすることも可能であるため、将来的には台所に設置する「調味家電」(宮下教授による造語)としての社会実装を目指しているという。家庭料理をプロの味付けにすることができるなど、あらゆる飲食物の味を安全に再現することが可能であるとしており、極端なものとしては、有毒で食べられない毒キノコのベニテングダケの味を、安全なエリングにて見た目も含め再現するといったことも可能だという。