京都大学(京大)は7月8日、波長変換材料を介した新たな半導体接合法を開発して太陽電池を作製したこと、ならびにその発電性能を実証した結果、今回作製した太陽電池は、従来型の太陽電池に比べて2割程度の電流の増大、3割程度の発電効率の上昇が観測されたことを発表した。

同成果は、京大大学院 工学研究科の田辺克明准教授、同・佐野直希大学院生(研究当時)、同・西ヶ谷紘佑大学院生(研究当時)らの研究チームによるもの。詳細は、米物理学会が刊行する応用物理学全般を扱う学術誌「Applied Physics Letters」に掲載された。

太陽電池の高性能化には、太陽光の幅広い波長域をできるだけ広く活用することが重要とされており、すでにそれぞれ異なる吸収波長帯を持つ半導体材料を複数積層したした多接合太陽電池なども開発されている。しかし、多くの多接合太陽電池は気相成長法により作製されており、気相成長法では、半導体材料の結晶におけるサイズの格子整合に制限があるため、理想的な吸収波長帯の半導体を組み合わせた多接合太陽電池を作製することが困難だったという。

こうした問題点の解決策として格子整合にとらわれることなく、自由に組み合わせた異種半導体材料の積層を可能とし、さまざまな光・電子デバイスの作製に適用可能なウェハ接合法が考案され、近年、より発電効率の高い多接合太陽電池が作製されるようになってきたという。

そうした中で研究チームは今回、受けた光をより波長の短い光へと変換する「上方変換材料」と呼ばれる材料に着目し、このような材料を介したウェハ接合技術を開発することにしたという。