デロイトトーマツグループは7月11日、日本・イギリス・アメリカにおける業績連動報酬へのESG(環境・社会・ガバナンス)要素反映状況に関する調査結果およびESGの情報開示状況に関する分析結果を発表した。
同調査結果によると、ESGの要素を役員報酬に連動させている日本の企業割合は、2020年度のデータでは短期・長期インセンティブ共に約15%にとどまっていることが分かった。
2021年度の英米の短期インセンティブ比率および英の中長期インセンティブ比率と比べると日本は大きく下回る状況であり、インセンティブの低さから役員のコミットメントを十分に取り込めていない可能性があると同社は推測している。
ESG連動の報酬検討が進まないことについて同社は、日本は英米と比較して役員報酬の決定を行う委員会メンバーの構成や独立性に課題があると指摘している。
TOPIX100企業における報酬委員会の設置率は英米と大差ないが、社外取締役などを委員長に登用する企業は7割弱にとどまっており、ほぼ全企業で独立社外取締役が報酬委員長に就いている英米とは異なる状況にある。また、報酬委員における独立取締役の比率は日本では約70%だが、英米の100%に近い結果と比較すると低い。
気候変動対策に関して温室効果ガスの排出削減などに関する取組を開示する企業割合について日英米3か国の比較を見ると、日本も9割超の企業が何らかの対策を打ち出している。しかし、実際に有価証券報告書などにおける事業リスクの分析で気候変動に言及する企業割合は6割にとどまり、気候変動対策と事業リスク分析においての開示差が英米と比較して大きいという。
その要因として同社は、日本と英米におけるサステナビリティに対するガバナンスの違いを指摘している。英米のサステナビリティ委員会は、経営の監督や中長期的な企業の在り方を検討するために取締役会の下部組織として位置付けている。
日本では、サステナビリティ委員会の設置率自体はTOPIX100企業において6割を超えるものの、うち8割が経営会議の下部である執行部門にのみ位置付けている。英米のように取締役会の下部組織(諮問機関)に設置している企業は、日本では約2割に過ぎない。
同グループのパートナーである村中靖氏は、「経営陣は、ESG連動型役員報酬制度を通じて、多様なステークホルダーに対して経営戦略を実現する意気込みを伝える必要がある」と述べている。