好みの多様性が拡大している現代、「推し」という言葉を耳にする機会も多くなったのではないだろうか。年々、認知度を高めている「推し」ブームだが、「推し」にお金をかけて楽しむ人も増えている。女性向けメディアを運営するMeryの推し活の「お金事情」ランキングによると、「推しに対して毎月10,001円~30,000円をかけている」という回答が最も多くなったという結果が出ており、「推し」の存在が日常の中心にある人も増えているようだ。
そこで今回、この「推し」の存在に着目したファイントゥデイ資生堂の「#推せる自分で会いに行こう」プロジェクトについて、企画者であるプロジェクトメンバーの方々に話を聞いた。
「推し」の存在で人生が豊かになった人は約9割
ファイントゥデイ資生堂が展開している「#推せる自分で会いに行こう」プロジェクトは、6月1日から7月31日の期間限定で、推しに会いに行く際に「推せる自分」でいるために、さまざまなコンテンツや取り組み、同社が持つスキンケアやボディケアに関する知見や製品を通じて、「推し」がいるすべての人を応援するプロジェクト。
アンバサダーには日向坂46の小坂菜緒さんが起用されており、「推しているファン側の視点」「推されているアイドル側の視点」の両方の視点で撮影された、小坂さんが登場するコンセプトムービーも公開されている。
筆者もこのコンセプトムービーを視聴したが、チケットの当落に一喜一憂する心情やライブの日を毎日待ちきれずに待つ様子など、細やかなファンの気持ちの移り変わりが描かれており、アイドルの推しを持つ人はもちろん、その他のジャンルでも「推し」という存在がいる人であれば、とても共感できる内容になっていると感じられる。
今回、アンバサダーとして小坂さんを起用しているため「推しがアイドル」という人に向けたプロジェクトに見られてしまいがちだが、「このプロジェクトで定義している推しはかなり幅が広い」と、ファイントゥデイ資生堂の事業推進部でトレードマーケティンググループのマネージャーを務める白川辰勇氏は語る。
「今回は、推しの中でも弊社の調査結果で推しの対象として1位になった『アイドル』をメインに起用していますが、実際にこのプロジェクトで定義している推しは多種多様です。アイドル以外にも、スポーツ選手やYoutuber、芸人さん、声優さんなどの有名人の『推し』はもちろんですが、他にも自分の孫やクラスの友人といった身近に推しを持つ人もいますし、中には、自動車や建築物、大仏といった『モノ』に対する推しの感情を持つ人も多くいます」(白川氏)
ファイントゥデイ資生堂は、今回のプロジェクトを始めるにあたって「推しのいる生活に関する実態調査」を行い、白川氏が挙げたような「どのようなジャンルに推しが多いのか」という調査をはじめ、「どのくらいの頻度で推しのことを考えるのか」「推しがいて良かったと思うことはなにか」などの質問から今回のプロジェクトの基盤を固めたという。特にこの調査では「推しがいる人の約9割が『人生が豊かになった』と実感している」という結果も出ているといい、同氏は社名の由来にもなっている「ファイントゥデイ=素晴らしい今日」との親和性の高さを強調していた。
推しがいない人にも「ファイントゥデイ」を
何故、一見すると関係のなさそうな「推し活」と「身だしなみ」を組み合わせることになったのだろうか? その答えは、先ほどの調査と共に行われた「推しに会う際の身だしなみ意識」についての調査結果が関係しているという。
「推しと会う際に自身の身だしなみへの意識が高まる」と回答している人は74%と高い割合を占めているのに対して、「推しに会う際の自身の印象や身だしなみに満足していない」と回答した人が57.4%と、身だしなみを意識している半面その現状に満足している人が少ないということが分かったのが、このプロジェクトの発端になったという。
また今回のこのプロジェクトに参加しているメンバーもそれぞれ、自分の推しを持つ人たちの集まりであり、実体験や実際に思ったことなどをとことん話し合うことで、企画として昇華させていったそうだ。
このプロジェクトを始めたことで、社内にも「推し」にオープンな風潮ができ上がり、新しいコミュニケーションの輪が広がっていったと語るのは、ブランドマーケティング部アシスタントブランドマネージャーの津倉徳真氏だ。
「このプロジェクトを始めたことで、社内でも『推し』によって新たな交流なども生まれています。中途入社の人が、最初の自己紹介で『私は○○が好きです』『私の推しは○○です』と推しについて語っていたり、社員内で『推し』のコミュニティができあがって情報交換などをしていたり……と自分の推しをオープンに話す人が増えたと思います」(津倉氏)
また、今回のプロジェクトを通じて、日向坂46のイベントに来ていた実際のファンと交流したメンバーは「推しが頑張ってくれているから、自分も磨きたいと思っていたが1歩目が分からなかった」という生の声を聴き、「その場でスキンケアの方法や商品を紹介して満足してもらえた」と今回のプロジェクトの手応えを感じていた。
最後にメンバーを代表して、津倉氏に今後の展望を聞いた。
「『推し』のジャンルが多種多様なのはもちろんですが、熱量や時間のかけ方など、推し方も人それぞれです。それをぜひ多くの人に知っていただき、『推し』がいる毎日を楽しむ人が増えるといいなと思います。そして、今はまだ推しがいない人にも『ファイントゥデイ』を届けられるような企画を考えていきたいです」(津倉氏)
筆者は今回のインタビューを通じて「推し」という言葉の深さについて改めて考えさせられた。 推しの存在は「好きな人・モノ」「応援している人・モノ」といった意味だけではなく、「その人・モノのために頑張りたいと思える存在」という意味を含んでいるような気がする。 そして、今回の「#推せる自分で会いに行こう」プロジェクトは、そんな一歩目を「後推し」してくれるプロジェクトなのかもしれない。