東急建設と野原ホールディングスは、オンラインで記者会見を開催。東急虎ノ門ビルの増築工事において、施工BIMデータの活用・連携による乾式壁に関わる建材の精密プレカット施工の実証と、その効果検証を共同実施したと発表した。
同実証は、国土交通省による「令和3年度 BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業(パートナー事業者型)」に採択されたのち実施された。
東急虎ノ門ビル増築工事における実証概要
今回の実証では、2021年6月から2022年3月にかけて行われた東急虎ノ門ビル増築工事において、内装工事の一部を従来の施工とBIMデータからの精密プレカット施工に分けて実施。現場施工の生産性・廃材やCO2の排出量、安全性などを、実数実測の上で数値化したという。
建築現場でのBIM活用を積極的に展開する東急建設は、今回のモデル事業全体の計画・管理や、構造設備を統合した施工BIMモデルの作成を行ったとしている。
一方、主に内装業界でBIMを軸とした建設DXを推進する野原ホールディングスは、同事業において、精密プレカットレベルのBIMモデルの作成やその活用、また同モデルを使ったデジタルツインでの出来高管理を行ったとのことだ。
生産性の向上やCO2削減などを実証
両社は、今回の実証の結果として、BIMプレカット施工は従来施工と比較して、現場作業の生産性向上、廃材やCO2排出量の削減、安全性の向上など、複数面において具体的な効果を確認できたと発表した。
現場作業の生産性の面では、プレカット施工により、LGS(ライトゲージスタッド)の組み込みや石膏ボードの貼り作業における所要時間は、従来施工と比較して約30~50%減少したといい、BIMの習熟度向上とサプライチェーンの工夫によってさらなる向上が期待できるとしている。
また、プレカットBIMモデルの活用で建材数量の正確な把握が可能になり、従来施工に比べて適切な数量の建材発注を実現したという。これにより、発注数量に対する現場廃材量はCO2重量ベースでの比較で4.6%削減されたとのことだ。
さらに、LGSや石膏ボードのプレカット施工を行うことで、工事現場における高速カッターの使用回数が4割減少したといい、騒音の未発生や、高速カッター・工作用カッターの誤操作による裂傷事故などの労災の防止に効果を確認したとしている。
プレカット施工による課題も表出
一方、今回の実証では、BIMプレカット施工による課題も表出したという。
第一に、プレカット材、特に石膏ボードなどの脆い資材は、作業現場への運搬時における損傷リスクを伴い、またそれを防ぐための梱包にもコストがかかる点がネックだという。
また、資材のプレカットを行った場合、従来施工に比べ資材サイズが多様化するため、運搬におけるパッケージングや現場での資材管理が煩雑化する点も課題だという。
会見に登壇した東急建設の三浦正悟氏は、これらの課題について「すべての資材でプレカットを行うのではなく、高さ方向のみプレカットを行い、資材の幅は現場で調整を行うハイブリッドな方法も含め、解決策を模索している」と語った。
両社が考える今後の取り組み
東急建設と野原ホールディングスは、今回の実証結果と課題を踏まえ、多用途物件での協働実証を継続する予定だという。
また東急建設によると、同社内ではすでに次の実証に関する検討が始まろうとしており、今回の結果や課題をもとにBIMでのモノづくりを進めたいとしている。
同氏はその上で「今回の内容は社内で抱え込むべきではないと思うので、サプライチェーン全体に取り組みを広げることで、建設業界全体をアップデートしていきたい」と語った。