NECは7月6日、衛星SAR(Synthetic Aperture Radar、合成開口レーダ)を用いたリモートセンシングとAI技術を組み合わせて、国土交通省が定める橋の点検項目のうち、従来発見が困難だった「異常なたわみ」をミリ単位の精度で検知できる技術を開発したと発表した。
同社は同技術を強化し、2025年度を目標に、橋の管理者や点検従事者向けの製品化を図るとともに、橋を含むインフラ施設管理全般のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に取り組む。
同技術は、リモートセンシングで得られる変位データを同社の独自AIが解析し、橋の変位予測モデルを作成することで、"いつもの状態"を理解し、予測から大きく外れる変位がある場合に「いつもと違う異常なたわみがある」と見なす。変位予測モデルは、橋の長手方向の位置によって異なる変位値をまとめて扱うことで、橋全体に対する異常なたわみの閾値を簡単に設定することが可能だ。
橋は構造や温度などによる影響を受けて変化するため、従来は異常性を見つけるための閾値を設定することが困難だった。同技術を活用することで、目視では気付きにくい程度の異常なたわみを複数の橋に対してまとめて検知でき、近接での目視点検が困難な河川・海・谷などに架かる橋の点検業務を効率化できる。
2021年10月3日に和歌山県 紀の川 六十谷水管橋が崩落したことを受けて、同社は六十谷水管橋を撮影した崩落前2年間の衛星SAR画像を入手し、同技術を使って崩落前の六十谷水管橋の変位を過去にさかのぼり評価した。その結果、崩落個所において崩落1年前から他径間と比較して1.5倍程度の大きさの崩落の前兆現象と考えられる変位が継続して観測されることがわかった。