SAPジャパンは7月5日、「SAP S/4HANA Cloud」に対応した「All-in-Oneパートナーパッケージプログラム」の提供を発表した。同日には、オンラインプレスセミナーが開かれ、同ソリューションの特徴などが解説された。

同ソリューションは、SAPのパートナー企業が提供するさまざまなSAPテンプレートのうち、中堅企業のSAP導入を支援するテンプレートをパッケージ化したものだ。

  • 「SAP S/4HANA Cloud対応 All-in-Oneパートナーパッケージプログラム」の特徴

    「SAP S/4HANA Cloud対応 All-in-Oneパートナーパッケージプログラム」の特徴

SAPの導入を検討している企業が、導入による実現範囲を正確に理解し、プロジェクト進行に伴う費用を把握できるように、同ソリューションでは対象業種を明確にして、各業種の標準的業務を事前に定義している。また、導入プロジェクトが12カ月程度で完了できるテンプレートを取り揃え、導入費用(SAP S/4HANA Cloud サブスクリプション費用を除く)を明確にしている点が特徴だ。

多様な業界に対応できるよう、まずは組立製造、プロセス製造業・医薬、商社・卸、プロフェッショナルサービス向けのテンプレートから提供を開始する。テンプレートの提供パートナーはアイ・ピー・エス、NTTデータ グローバルソリューションズ、コベルコシステム、JSOL、SHINコンサルティング、ビジネスエンジニアリング、日立システムズ、フォーカスシステムズ、フリーダムの9社からスタートし、テンプレートとパートナー数は順次拡大していく予定だ。

  • 「組立製造業」向けテンプレートパッケージの例。対象業務範囲や導入にかかる期間のほか、導入費用も明示される

    「組立製造業」向けテンプレートパッケージの例。対象業務範囲や導入にかかる期間のほか、導入費用も明示されている

2022年2月16日のビジネス戦略発表会にて、SAPジャパンは中堅・中小企業への販売拡充戦略として、「100%パートナー企業による間接販売」を推進すると発表したが、今回発表したソリューションはその一環となる。同ソリューションもSAPのリセールライセンスを保有するパートナーからの間接販売となり、各パートナーからSAPのパッケージと併せて提供される。

SAPジャパン バイスプレジデント ミッドマーケット事業統括本部長の田原隆次氏は、「中堅企業におけるSAP製品の導入プロジェクトでは、パートナーテンプレートを活用してシンプル・短期・低コストに導入を進め、早期効果創出と投資対効果の最大化をねらおうとする例が多い。『導入範囲』『期間』『費用』のモデルケースを提示することで、パートナー各社と共にお客さまの投資効果の最大化を目指したい」と語った。

  • SAPジャパン バイスプレジデント ミッドマーケット事業統括本部長 田原隆次氏

    SAPジャパン バイスプレジデント ミッドマーケット事業統括本部長 田原隆次氏

これまで、SAPジャパンおよびパートナー企業は、SAP製品の導入にかかる期間やコスト(費用)を必ずしも事前に明示できていなかった。だが、田原氏はパートナーでのノウハウが蓄積してきたことに加えて、「顧客側のERPパッケージの導入アプローチがクラウドベースに意向しつつあり、かつパッケージに業務を合わせる『Fit to Standard』でのシステム開発方針に切り替わってきたことで導入事例が増え、今回、提案段階で期間とコスト明示できるようになった」と明かした。

プレスセミナーでは、SAP S/4HANA Cloudの導入事例として、ニチバンの事例が紹介された。同社では、創業100周年を迎えた2018年に、中長期ビジョン「NICHIBAN GROUP 2030 VISION」とともに中期経営計画を策定し、社内のDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として、2025年を目標に基幹システムの刷新を進めている。

  • ニチバンのDXの中長期ロードマップ

    ニチバンのDXの中長期ロードマップ

非基幹業務(システム刷新の対象外)のシステムは、SaaS(Software as a Service)に置き換える一方、基幹業務については標準化・データ統合・グローバル対応を実現するため、グローバル標準ERPシステムの導入を決め、SAP S/4HANAとともにアイ・ピー・エスが提供する「EasyOne」の導入している。

ニチバン 執行役員 経営企画室 情報システム部長の奥山尚氏は、「システム刷新プロジェクトの立ち上げにあたり、初めてプロジェクト憲章を策定した。メンバーの意識統一と判断基準の明確化が目的だったが、判断に迷ったときに立ち返る基準がはっきりしたことはプロジェクト推進にあたってプラスとなった。また、EasyOneはSAPの設定だけでなく、設計のベースとなるドキュメントも用意されているため、導入したことでプロジェクトの設定・設計がやりやすくなった」と述べた。

  • ニチバン 執行役員 経営企画室 情報システム部長 奥山尚氏

    ニチバン 執行役員 経営企画室 情報システム部長 奥山尚氏