米Hewlett Packard Enterprise(HPE)は6月28日から30日まで米ラスベガスで「HPE Discover 2022」を開催した。会期中、ハードウェアベンダーからアズ・ア・サービスへと変革を進めるHPEの中核となる「HPE GreenLake」を中心に、CTOのFidelma Russo氏がHPEのビジョンと最新の機能を発表した。

  • 2021年にHPEのCTOに就任したFidelma Russo氏。GreenLakeのプラットフォーム化に責任を持つ

Russo氏はまず、ITの変化から説明した。

「これまでのITはハードウェアとソフトウェアにフォーカスが当たっていたが、新しい時代はデータの観点から考える必要がある。データ中心のアプローチをとり、データから価値を得るために必要なハードウェアコンポーネント、ソフトウェアコンポーネントは何かを考えるべきだ」(Russo氏)

そのデータは日々生成され、増加の一途を辿っている。これは予想通りだが、予想通りではなかったことがある、とRusso氏ーーデータが生成される場所だ。

「2000年ごろはあらゆるデータがデータセンターで生成すると考えられており、その後パブリッククラウドが人気を集めるとパブリッククラウドにデータが集中すると予想された」とRusso氏、だが現在は「2025年にはデータの50%がエッジにあると予想されている」と続ける。

ネットワークに接続されたデバイスの数は500億台を数えるが、3年後にはその3倍の1500億台と予想されている。これらが生み出すデータの量は175ゼタバイト、そのうち30%はリアルタイムで処理される必要があるとHPEは予想しているという。

「中央にあるクラウドに送信して処理するうちに機械を損失したり、ビジネス価値を喪失してしまう」からだ。

これを解決するのが、エッジでのコンピューティングだ。データを動かすのではなく、「コンピューティングと処理を分散させ、これらが協調的に動くようにする。分散されたエッジだけでなく、データセンターやパブリッククラウドとの協調も必要だ」(Russo氏)。

これをRusso氏は「分散型エンタープライズ」と呼ぶ。

これを実現するためにRusso氏が必要とする特徴が、「クラウドのような消費体験」「管理性」「オープン性」「アジリティ」「復元力」などだ。そして、HPEが”Edge-to-cloudプラットフォーム”と位置付ける「HPE GreenLake」は、この実現を支援するサービス群となる。

  • 「HPE GreenLake」

HPE Discoverでは分散型エンタープライズを実現する「HPE GreenLake Data Fabric」を発表した。

HPE GreenLake Data Fabricはコンピューティングが分散されたハイブリッド環境において、それぞれにあるデータのプールを結びつけて単一のビューを得て、どこからでもアクセスできるようにするマネージドサービスだ。アクセス管理などの特徴も備える。

  • HPE GreenLakeプラットフォームはオープン性を特徴とし、HPE Ezmearlのほか、Microsoft、Nutanix、Red Hat、SUSE、VMwareなどをアプリケーションプラットフォームとして利用できる。

これに加えて、Russo氏は分散型エンタープライズを支援するために現在取り組んでいるプロジェクトとして、「Project Edge Cluster」「Project Sustainability Dashboard」「Project Data Map」の3つを紹介した。

Project Edge Clusterは、Arubaのネットワーキング、コンピューティングとストレージ、データ管理、サークロード管理を統合したシステムで、「あらゆる拠点でアプリケーションとデータを実行できるようにする」という。ハードウェアレベルのセキュリティであるゼロトラストをはじめとしたセキュリティも重要な特徴になるようだ。

  • 「Project Edge Cluster」

「Project Sustainability Dashboard」は分散されたITインフラが消費する電力を可視化するもの。

「どのサイト、どのサーバーでどのぐらいの電力が消費されているのか、コストと経済性を見ることができる」(Russo氏)という。

HPEは「Living Progress」として自社のサステナビリティの取り組みを公開しており、ネットゼロの実現目標を10年前倒しし、2040年を目指して進めている。

自社のITのCO2排出量などを把握することは「電力コストだけでではなく、地球への責任という点でも重要」とRusso氏、「Sustainability Dashboardを利用することで、特定の時間だけ動かすなどの効率化につながる決断を下すことができる」(Russo氏)という。

  • 「Sustainability Dashboard」のプレビュー画面

「Project Data Map」は、エッジのデータをHPE GreenLake Data Fabricでつなげた後、データを集約してみる部分を受け持つ技術となる。メタデータを使うことで、データを動かすことなくログファイルとファイルシステムなどから抽出し、さまざまな場所にあるデータに対して相関関係をみることができるという。

デモでは、世界にあるデータセンターからパリの拠点でCPU使用率が低いのに電力コストが高いことがわかり、レポートの前にデータベースをコピーするプロセスが走っているという無駄を探りあてる様子を見せた。

これらの開発中の機能を紹介した後、「HPE GreenLakeはエッジからパブリッククラウド、コロケーション、データセンターなどをカバーし、クラウドのようにシステムを運用できる。HPEは今後も(GreenLakeに)イノベーションを組み込んでいき、企業がデータから価値を得ることを支援していく」とRusso氏は約束した。