GitHub.comの利用をやめようと言われても、多くのソフトウェア開発者やGitHub.comのユーザーにとって、それはかなり困難で突拍子もない提案のように聞こえる。この便利なサービスなしには日々の生活が成り立たなくなっているユーザーは世界中にたくさんいる。
Software Freedom Conservancyは6月30日(米国時間)、「Give Up GitHub: The Time Has Come! - Conservancy Blog - Software Freedom Conservancy」において、同組織におけるGitHubの使用を中止するとともに、他のFOSSプロジェクトがGitHubからほかのサービスに移行するのを支援する長期計画を実施すると伝えた。
Software Freedom Conservancyは現在のGitHubの取り組みに疑問を呈しており、AI支援ソフトウェア開発ツールのあり方なども含めて同組織の提案が多くの議論につながることを期待すると述べている。
Software Freedom Conservancyは歴史的な流れや最近のGitHubの行動などから、このところFOSSのホスティングサービスとしてGitHub.comを使うことに懸念を抱いていることを説明。特に「Copilot」という機械学習ベースのAI支援ソフトウェア開発ツールを巡って、その懸念は無視できないものになったとし、GitHubの使用をやめ、ほかのサービスへの移行を促す行動を起こすに至ったと説明している。
Software Freedom Conservancyは複数の懸念を挙げているが、特にCopilotに関する次の質問に対して回答が得られなかったことを取り上げて懸念を示している。
- パブリックデータに基づいた機械学習システムをトレーニングすることはフェアユースであり、その利用はコンパイラのようにオペレータに帰属する、という考えはどの判例に基づいているのか。その理由について法的な分析などを示してほしい。
- 任意のコードでモデルをトレーニングすることが許可され、そしてライセンス条項に拘束されないというのであれば、なぜFOSSのデータのみを使ったトレーニングを実施したのか。Microsoft WindowsやMicrosoft Officeのコードベースがトレーニングセットに含まれていないのはなぜなのか。
- Copilotで使われたトレーニングセットに含まれていた著作権所有者の名前やGitリポジトリの名前を含むライセンスリストを示すことはできるか。できない場合、なぜそのことについて説明を行っていないのか。
GitHubはGitをベースとしたバージョン管理システムに便利なユーザーインタフェースやAPIを提供し、ソーシャルインタラクションサービスを統合し、ソフトウェア開発者にとって人気のあるプラットフォームとしての地位を確立している。Copilotの機能を称賛する声も多い。Software Freedom Conservancyの今回の発表は多くの議論を生む可能性がある。
Software Freedom Conservancyの委員会はAI支援ソフトウェア開発ツールに関する調査を続けていると説明するとともに、FOSSライセンスを尊重する形でこうした機能を実現することは可能であることが最近の調査からわかったことなどにも言及している。
同委員会は今後もこの分野への取り組みを続けるとしているほか、Amazon CodeWhispererのようにコード提案時に適切な帰属とライセンス情報を表示しようとする取り組みがあることについても説明している。