楽天とバニッシュ・スタンダードは7月1日、販売員におけるDX推進を目的として、楽天が運営するファッション通信サイト「Rakuten Fashion」とバニッシュ・スタンダードが提供する企業と販売員と顧客のエンゲージメントを向上するアプリケーション「STAFF START」のコーディネート投稿機能の連携を発表し合同で記者会見を開催した。本稿では、会見内で語られた連携内容を紹介しよう。
販売スタッフのDXを推進する「STAFF START」とは?
今回「Rakuten Fashion」との連携が発表された「STAFF START」は、ECサイトやSNS上でのオンライン接客を可能にするサービス。
同サービスが提供している機能のうち、最も頻度が高く使用されている「コーディネート投稿機能」は、店舗スタッフが撮影したコーディネート画像に商品情報などをひもづけてECサイトやSNSに投稿する機能。その投稿を通じて商品紹介やコーディネート提案といった接客対応を行うことができるという。また、スタッフの投稿を通じて達成されたECサイトの売上は可視化されて、スタッフ個人や所属する店舗の実績として評価に利用され、販売員の満足度につなげているという。
今回の連携により、「Rakuten Fashion」に参加するブランドショップは、これまで自社ECサイトに投稿していたコーディネート画像を、「STAFF START」 のコーディネート投稿機能を通じて「Rakuten Fashion」でも表示し、取扱商品を使用したコーディネート画像を簡単に紹介できるようになる。
また今後は、ブランドショップが同機能を通じてコーディネート画像を投稿すると「Rakuten Fashion」の商品ページに自動で表示されるようになり、より効率的にユーザーに商品の魅力を発信できるようになる。
今回の連携に関して楽天の上級執行役員でコマースカンパニーヴァイスプレジデントの松村亮氏は、「店舗スタッフのメディア化と活躍の場の拡大に向けて、データ活用によるユーザーマッチングを強化していきたいと思っています。将来的には、店舗スタッフが顧客に向けて接客販売できるツールなどの検討も予定しています」と、今後のさらなる連携の可能性を示唆していた。
また、バニッシュ・スタンダードの代表取締役の小野里寧晃氏は、「楽天と連携することで自社ECサイトやSNSだけでは出逢えない『顧客との出会い』が可能になります。今後は、STAFF STARTのオンライン接客のノウハウとRakuten Fashionのデータベースを活用してスタッフ起点の高精度なレコメンドを実現し、店舗やECサイトのみではなくRakuten Fashionからもスタッフが評価してもらえるたらと思っています」と今後の展望を語っていた。
販売スタッフの地位向上のために求められるのは「経営層の理解」
トークセッションには、松村氏と小野里氏のほかに、ファッションブランドの代表としてユナイテッドアローズ執行役員の藤原義昭氏が登壇し、ブランド側から見た今回の両社の連携についてコメントした。
藤原氏は、販売員とのコミュニケーションによって満足度を高める路面店とコロナ禍や猛暑などの要因で外に出にくい現状でも気軽に買い物を楽しめるECサイトには、それぞれの役割があるとした上で、次のように語っていた。
「ECサイトで売り上げを上げるためには、顧客満足率を上げるだけでなく『返品率』を下げることも大切です。スタッフのコーディネートなどを見ていただくことで『こんな着方があるんだ』『こんな自分になれるんだ』と、商品だけではなくファッションそのものを好きになっていただければ、おのずと結果として良いものになると思っています。また、スタッフも自分を見てもらえることで『顧客への貢献』を実感でき、社会的に意味があると感じています」と、両社の連携に期待を寄せていた。
会見の最後に小野里氏は「オンラインを利用しているところから路面店に来てくれる顧客が増加するという循環はすでに生まれています。店舗での接客とECサイトでのオンライン接客、どちらの仕事にも意味があることを経営層に理解していただくことが、ファッション業界のDXを進める上で最も重要な課題だと感じています」と、今後のファッション業界の課題を提示し、会見を締めくくった。