電通グループと宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月1日、人工衛星データ活用による、広告の高度化を通じた需要の創出と需給の最適化の実現に向けた共創活動を開始すると発表した。
人工衛星データは、農業分野において農作物の収量増大や収穫時期予測に活用できる。しかし、天候の影響によりデータが欠損し、解析が困難になるといった課題がある。
両社は同共創により、その課題解決に向けた技術研究を行うとともに、それらの情報を、農作物や関連商品の販売時期に合わせた広告出稿のタイミングの調整に用いる。販売・広告施策にリアルタイムに反映させることで、需要創出と需給の最適化の実現を目指す。
電通は2020年に、テレビ広告の効果を向上させる基盤システム「RICH FLOW」を開発。RICH FLOWは、複数の広告主間でテレビ広告枠の組み換えを行い、広告効果を向上させるための最適パターンを提案するシステム。AI(人工知能)を活用し、広告主のニーズに基づく最適な組み換えパターンを特定した上で、対応可能な放送局と連携し、適切に広告枠の組み換えを行う仕組みだ。
今回の共創では、連携協力者と共に、衛星データを解析して農作物の出荷量や出荷時期および価格の予測モデル構築・高精度化を行った上で、RICH FLOWを用いることで、当該作物を食材として用いる調味料商材の広告出稿の種類・タイミングの最適化を目指す。
一方JAXAは、これまで培ってきた地球観測衛星の利用技術をベースに、今回の共創では、雲の影響などにより衛星データ利用が制限される現状課題の改善に取り組む。具体的には、AIを活用して光学観測で発生しうる地上データ欠損(雲による遮蔽など)を補完する技術の研究に取り組むとしている。また、新たに圃場の協力を得て実地データと衛星解析データを突合し評価し、衛星データ解析技術の高度化を目指す。
両社は、共創活動による「広告の効率化・高度化」を通じて、宇宙分野以外の新規プレイヤーによる衛星データを活用した需要創造の新たなユースケースの開拓を行うとともに、生鮮食品のサプライチェーン効率化を図り、持続可能な社会の実現を目指す考えだ。