私達は生活する場所、すなわち気候や風土、自然環境などに適応しながら生活している。ダーウィンの進化論がうたわれるように、人間は変化に適応しながら種の存続を果たしてきたのだ。

生活拠点から入手しやすい材料によって風土が生まれ、生活する人々の気質や思想が形成される。いうなれば外界環境とつながっているのだ。人が集まり“まち”がつくられ、そして“都市”にとなっていく。子供からしてみれば“この指止まれ”を大人が本気でやったら都市がつくられていたくらいの話だ。

しかし、今では大人達がつくった建築物やシステムのシワ寄せが気候変動となって子供のみならず未来人に襲いかかるとされている。快適なハコの支配下にいることで私達の生活は快適になったのだが、外界環境とのつながりは分断されたように思える。

そのため、今一度、環境と住まいのかたちや知恵を見直すべきではなかろうか。今回はそんな想いで筆を走らせてみた。

住まいのかたち

冒頭でも説明したとおり、私達は拠点とする場所に適応しながら生活している。それは生活の器である住宅にも表れる。

例えばヒマラヤ4000mの高地では1日の気温差が30℃以上もあり、まさに1年を通じた四季を、明日行きのジェットコースターにのって体感するような、目まぐるしい自然環境である。

そんな環境下においては、室内気温の変化が緩慢である方がよいというのは想像に容易いだろう。数時間前には灼熱だったのに今では冷凍庫並みの寒さが襲ってくるような空間を家と呼ぶには、いささか刺激的すぎるのではなかろうか。

そのため高地の住宅は、その地で採れる石や砂などで厚い壁をつくり、木を組んだ平らな屋根に粘土などのせて仕上げる。気密性が高く、かまどなどの熱を逃しにくいうえ、何より熱容量が大きい石などが主材料であるため外気温の急激な変化に対し、室温の変化は緩やかである。

また、降水量の多寡によっても様式が異なる。乾燥地域の住宅の主材料は土や石、雨の多い地域では木材でつくられるケースが多い。

  • 日干しレンガのアドベ住宅

    日干しレンガ「アドベ」で作られた住宅。この写真は、アメリカのニューメキシコ州にある世界遺産、プエブロ・デ・タオスのもの

また、乾燥地帯の屋根は平らな陸屋根(フラットルーフ)が多く、降水量の多い地域では屋根の形状は切妻や寄棟などの傾斜があるものが多いのが特徴だ。無論、日本も梅雨や積雪などがあるため基本的に傾斜がある住宅がマジョリティである。

このように地域の気候特性に適応した形状が住まいに反映され、文化、風土をつくり、今では観光資源となっているのである。

構造のしくみ

さて、次に構造の話をしよう。建築物の基本的な構造は読者諸君もご存知であろう。木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造と呼ばれるものだ。

また、これら構造にぶら下がる形で構法という言葉がある。例えば、木造であれば在来軸組構法、ツーバイフォー構法、鉄骨造であれば重量鉄骨造、軽量鉄骨造、鉄筋コンクリート造であればラーメン構法、壁式構法などがある。

日本住宅では在来軸組工法が主流で、柱が10cm~12cm角、梁は幅12cm、高さ18cm~36cmの軸材から構成され、日本の気候に適した構法とされている。

鉄骨造は大型施設から住宅まで幅広く使われ、H型鋼、鉄管、甲鋼、L型アングルなどさまざまな厚さと形状の材料を組み合わせて構成される。

また鉄筋コンクリート造は、骨組みを鉄骨で組み、周りをコンクリートで補強した構法で、マンションやビルなどの大型建築物は、基本この構造だ。

枝分かれしたこれら建築構造の変遷は、まさに技術の発達史である。また命を委ねるハコづくりにおいて、安全性の確保は最重要であり、建築物自体の重さ(固定荷重)や、フロアに置く荷物の重さ(積載荷重)、寒冷地域での雪の重さ(積雪荷重)、地震、風圧、熱膨張など、さまざまな荷重を考慮して設計されている。

現場のしくみ

1つの建築物をつくるには、非常に多くの専門家(職人)の力が必要となる。例えば、土木工事、左官工事、屋根工事、電気工事、ガラス工事、塗装工事、熱絶縁工事、水道施設工事などなど、多くの知恵と技術の集合体が建築物という物理的な形となって表現されているのだ。

まず現場が始まり、最初に入るのは鳶職だ。ボンタンを履いてヘルメットしている人を見たことあるだろう。鳶職は木造や鉄骨造の現場では構造を組み上げる、まさに工事の花形である。

  • 組み立て工事のイメージ

    組み立て工事のイメージ

一方で、建設現場における労働不足や労働コストの高騰、また建設資材搬入搬出などの重労働作業をうけ、建設現場にICT技術を活用する動きもある。

”i-Construction”と呼ばれ、国土交通省を中心に提唱されている。具体的には、TS(トータルステーション)やGNSS技術による3Dマシンコントロールや3Dマシンガイダンスなどを用いたICT建設機器や重労働作業を補助するパワーアシスト機器などがある。

  • i-Constructionの施策(出典:国土交通省)

    i-Constructionの施策(出典:国土交通省)

いかがだっただろうか。

建築についてザックリと基本的な部分を要約した。興味がある(住宅購入を検討しているなど)部分はぜひ、個人的に調べてみるのもいいだろう。

また、パッシブデザインという環境調和型の住宅などもハウスメーカーしかり個人設計事務所しかりで取り組んでいる。

環境問題やSDGsが世界的に取り上げられるなか、今後住宅はどのような形となっていくのだろうか。現在はIoTなどのスマート住宅が普及しつつあるが、その先の住宅はいかに。