ロシアの資源武器化戦略の一環として、ロシア貿易省のシュパク次官は6月初旬、タス通信を介して「2022年5月末から6種類の希ガス(ネオン、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、キセノン、ラドン)の輸出を制限する措置を取った」ことを明らかにした。

希ガスは半導体の製造に欠かせないもので、この輸出制限により、韓国や日本など各国の半導体サプライチェーンが影響を受ける可能性があると韓国の複数のメディアが報じている。一部では、希ガスをほとんど輸入に依存している韓国が最大の打撃を受けるだろうという分析も出ているという。

韓国の税関統計によると、2021年の韓国のネオンガス輸入元は、中国が67%、ウクライナが23%、ロシアが5%となっており、ウクライナやロシアへの依存度は、日本で言われているほどには大きくない。また、韓国の半導体工場は、必要な希ガスについて数か月分の在庫があるとしているものの、ロシアのウクライナ侵攻が長引けば、供給不足が顕在化する可能性が高いという。こうした希ガスは、鉄鋼業において、空気分離で酸素を取り出す際に副生成物として入手可能なため、鉄鋼業が盛んな中国からも入手可能であるが、価格が高騰しているという。

韓国の半導体関係者によると、「韓国は希ガスのほとんどを輸入に頼っているほか、米国や日本、欧州と異なり、空気分離で希ガスを製造できる大型ガス会社がないため、今回の輸出規制の影響をもっとも受ける可能性が高い」とみられるという。

なお、韓国の半導体業界はロシアのウクライナ侵攻開始以降、中国からのネオンガス輸入量を引き上げたほか、希ガスの独自確保に向けた取り組みも強化したという。すでに韓国の半導体素材国産化方針に沿って、韓国最大の鉄鋼メーカーであるPOSCOが、高純度ネオン生産の準備を2019年より開始、2022年1月から、光陽(クァンヤン)製鉄所の酸素工場に大型空気分離装置を活用したネオン生産設備を竣工し、高純度ネオンの生産を行っているという。POSCOの高純度ネオン生産には韓国の半導体用特殊ガス専門企業のTEMCが協力しており、TEMCが独自技術で精製した後、完成品の「エキシマレーザーガス」としているという。光陽製鉄所の酸素工場では高純度ネオンを年間約2万2000Nm3を生産できるが、国内需要の16%にしかならないという。またPOSCOでは、他の希ガスについても光陽製鉄所酸素工場で製造する準備を進めているという。