ヴイエムウェアは6月29日、既存のオンプレミスのインフラ環境にクラウドのメリットを提供するサービス「VMware vSphere+」と「VMware vSAN+」を発表した。
両サービスは、同社の年次イベント「VMworld 2021」で発表された「Project Arctic」を製品化したもの。当時、「Project Arctic」は仮想化ソフトウェア「vSphere」の新しいアーキテクチャであり、vSphereにクラウドへの接続機能を付加して、ハイブリッドクラウドを「デフォルト」のオペレーティングモデルにするものと発表された。
米VMware Sr. Director, Product MarketingのWeiguo He氏は、「最近のトレンドとして、クラウドへの移行が進んでいるが、まだ多くのワークロードがオンプレミスに残っている。また、エッジにワークロードが置かれているケースもある。『VMware vSphere+』と『VMware vSAN+』によって、ユーザーはクラウドとオンプレミスの長所を利用できるようになる。クラウドのメリットをオンプレミスのワークロードに提供できるようになることで、開発の速度も上がる」と説明した。
同社は、オンプレミスとマルチクラウドのVMware Cloud環境を一元管理できるコンソール「VMware Cloud Console」を提供している。この「VMware Cloud Console」を介して、「vSphere+」と「vSAN+」はオンプレミスやエッジに分散しているインフラを統合的に管理することを可能にする。
具体的には、VMware Cloud Consoleによって、オンプレミス環境におけるグローバルのインベントリ、コンフィグレーション、アラート、セキュリティステータスの管理が行えるようになる。管理者はVMware Cloud Consoleから直接、展開環境全体の設定/ポリシー管理など、特定の運用タスクを実行することが可能になる。
加えて、オンプレミスのインフラコンポーネントの更新をクラウドベースの自動化機能によって行うことで、ライフサイクル管理を大幅に簡素化できるという。コンプライアンスの順守に向けたセキュリティ チェックを含め、クラウドベースの修復およびコンフィグレーションドリフト機能も活用できる。
「vSphere+」と「vSAN+」のメリットはオンプレミスの管理性の向上だけではない。アプリケーションの開発スピードの向上ももたらす。「vSphere+」は、Kubernetesでオーケストレーションされた仮想マシンとコンテナを実行できる単一のワークロードプラットフォームを提供することで、オンプレミスのインフラをKubernetesプラットフォームに統合する。
また、vSphere+では、VMware Tanzu Standard Runtimeによって、開発者はオンプレミス、パブリッククラウド、エッジ環境にわたる一貫性と効率性を実現しながら大規模なKubernetes環境の実行、管理を可能にする。VMware Tanzu Mission Control Essentialsの提供により、Kubernetesフットプリント全体を網羅したグローバルな可視化と運用タスクの自動化も実現する。
さらに、「vSphere+」と「vSAN+」を利用することで、、オンデマンドで提供されるランサムウェアへの対応、オンデマンドのディザスタリカバリ対応ができるサービス「VMware Cloud Disaster Recovery」など、アドオン型クラウドサービスを利用しワークフローを保護できるメリットも得られる。He氏によると、現在、アドオン型クラウドサービスとして、キャパシティ計画サービスを計画中だという。
vSphere+とvSAN+では、オンプレミスの展開環境に向けてサブスクリプションの利用モデルが提供されるほか、VMware vCenter、VMware ESXi、Tanzu Standard Runtime、Tanzu Mission Control Essentialsなどの必要なコンポーネントとサポートをすべて含む単一のSKUも提供される。
vSphere+とvSAN+は同社の2023年度第2四半期末(2022年7月29日)までに提供予定であり、Tanzu Mission Control EssentialsはvSphere+のコンポーネントで、2023年度第3四半期(2022年7月30日~10月28日)に提供される予定。