MM総研は6月23日、全国1425自治体を対象に実施した「GIGAスクール構想実現に向けたICT 環境整備状況」に関する調査結果を発表した。
これによると、GIGAスクール環境に適応した授業用端末を教員1人1台分配備できている自治体は37%に留まっていることが明らかとなった。GIGAスクール構想より前に配備された古い授業用端末を含めても、1人1台化できている自治体は54%と半数程度にとどまる。
文部科学省は生徒用端末1人1台分の予算措置をしたが、教員の授業用端末配備に予算をつけなかったことで、指導用端末の不足や生徒用と異なる端末環境を背景に、授業の運営に支障をきたすなどの課題が残ったと同社は指摘している。
このため政府は、2021年12月20日に成立した2021年度補正予算で教室環境の改善を目的とした予算を84億円計上し、教員の授業用端末購入にも充てられるようにした。しかし配備率は伸び悩んでおり、補正予算成立後である「2022年以降に授業用端末を調達した」との回答は25自治体にとどまっているという。
また、GIGAスクール環境に適合した自治体の情報セキュリティポリシー改訂にも遅れがみられる。
GIGAスクール環境整備にあたり、学校のセキュリティ対策も見直す必要がある。文部科学省は2021年5月、1人1台端末やクラウドの利用を前提としたセキュリティ対策がとれるよう「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を変更。この変更により、所属する自治体・組織内でデータを共有するために、クラウドへデータをアップロードすることなどが認められた。
同社は、文部科学省のガイドライン変更を受け、自治体はそれぞれ定める情報セキュティポリシーを改訂する必要があると指摘。今回の調査結果によると、すでに改訂している自治体は43%であり、前回調査(2021年7月)から5ポイント増えた。残りの約6割は、制度の面でGIGAスクール環境への対応が完了していない可能性が高いという。
さらに8割の自治体がメールやチャットなどの機能を制限していることが分かった。
約8割の自治体が「Google Workspace for Education」や「Microsoft 365 Education」などのクラウドサービスを教育情報基盤として端末とともに利用しているが、このうちメール、チャット、ストレージなど主要な標準機能を制限なく利用できる自治体は2割にとどまる。残る約8割の自治体はメールやチャットといったコミュニケーションツールを中心 に機能制限をかけていることが判明した。
「適切な情報漏えい対策を用意できない」、「ツールを子供たちに利用させる際の適切な運用制限ができない」、「ルール作りが進まない」ことなどが背景にあるとみられるが、クラウド活用を前提としたルール作りと運用の転換が必要だろう。