ソフトバンクは6月22日、フットプリントの固定を実現するシリンダー形状の多素子フェーズドアレイアンテナ「シリンダーアンテナ」を搭載した高高度係留気球基地局を、Altaeros Energies(以下、Altaeros)と共同開発し、実証実験に成功したことを発表した。
同社は今回、フットプリント固定技術を開発し、Altaerosの高高度係留気球「ST-Flex」を組み合わせた高高度係留気球基地局の開発に取り組み、気球を高度に係留しながら重いペイロード(通信機器)の搭載を実現した。
北海道の大樹町多目的航空公園で実施した実証実験では、「ST-Flex」を高度249メートルに係留させて通信試験を行い、見通しが良い環境下においては最大数十キロメートルの距離で広域な通信エリアが確保できることを確認している。また、風速や風向に応じて係留気球基地局の姿勢や位置が変動する場合でも、携帯端末においてハンドオーバーが発生せず、安定した通信が確認されたとのことだ。
ソフトバンクおよび子会社のHAPSモバイルは、成層圏から通信ネットワークを提供するプラットフォーム「HAPS(High Altitude Platform Station)」で安定した通信エリア(フットプリント)を構築することを目指して、フットプリント固定技術に関する研究開発を進めている。
HAPSのような上空の通信プラットフォームにおいては、無線基地局を搭載した機体が旋回しながら地上に向けて通信サービスを提供する。しかし、機体の旋回によって地上に形成される通信エリアが移動するため、携帯端末の接続先のセルが別のセルに切り替わるハンドオーバーが起こって受信レベルなどの通信品質が安定しない点が課題だった。
ソフトバンクとHAPSモバイルが開発したフットプリント固定技術は、「シリンダーアンテナ」を用いたデジタルビームフォーミング制御によって、機体の旋回に合わせて動的に電波の向きを制御することで通信エリアを固定し、通信品質の課題が見込めるという。
両社が今回開発した高高度係留気球基地局は、3本のロープをAI(Artificial Intelligence:人工知能)で制御し、最大高度305mでの気球の係留を実現する。また、最大60キログラムのペイロード(通信機器)の搭載が可能で、オートパイロットシステムにより運用人員の削減にも寄与する。