6月7日から10日まで東京ビッグサイトで開催された「FOOMA JAPAN 2022」で、デンソーウェーブは、新製品の人協働ロボット「COBOTTA PRO」をはじめ、調理工程の自動化や食品の自動良品検査などに貢献する協働ロボットを、実演を交えながら展示した。

  • デンソーウェーブブースの様子

    デンソーウェーブブースの様子

冷凍フライの調理を自動化する新製品「COBOTTA PRO」

食品工場の中でも、冷凍食品のフライ調理を行う現場においては、高い温度や湿度、空間内に充満する油のにおい、高温の油を扱う危険性などから、労働者が過酷な環境での作業を強いられていた。しかし専用ロボットの導入には非常に高いコストを要することなどから、自動化が進んでいない現状がある。

そこでデンソーウェーブは、高速での動作が可能で人との協働能力も持つ新製品のロボット「COBOTTA PRO」を開発。さらにAIソフトウェアを開発するベンチャー企業と協力し、冷凍フライのピッキングからフライヤーへの投入までを自動化するシステムを構築した。今回の展示会では、作業の実演展示が行われた。

  • 冷凍フライの調理を自動化するCOBOTTA PRO

    冷凍フライの調理を自動化するCOBOTTA PRO

このシステムは、ばら積みされた冷凍フライをカメラで1つずつ認識し、種類ごとに適切な調理ができるようにピッキングといった作業を行う。またCOBOTTA PROに内蔵されたセンサにより、周囲に人がいない場合には高速で動作し、人が近づいた場合は安全な速度での作業になるとしている。

大がかりかつ高コストな産業ロボットに比べ、柵の設置が不要で省スペース化を可能にする協働ロボットは、狭い食品製造現場などにおける導入に対する敷居を下げることができるという。

またコンセプト出展として、食品用ロボットに被覆させるジャケットもCOBOTTA PROに装着する形で展示された。

厳しい衛生管理が求められる食品製造現場だが、製造ロボットの清掃は大きな作業コストを伴う。またロボット自体を抗菌素材などに変える場合には、莫大なコストがかかってしまう。

そこでデンソーウェーブは、COBOTTA PROの外側に被覆させる専用のジャケットを製作。止水ファスナーによって簡単に着脱が可能で、清掃の際には丸洗いできるといい、毎日の丸洗いにも対応しているとのことだ。

愛知工業大と共同開発した自動クレープ調理ロボット

デンソーウェーブは、愛知工業大学が行うハッカソンにかねてより協力しており、同社のCOBOTTAを使用した新たなアイデアの実現を行っている。

今回のブースでは、2台のCOBOTTAによるクレープの自動調理が実演された。クレープの焼き台に油を引く、生地を薄く伸ばしながら焼く、生地を移動しクリームなどをトッピングする、生地をたたみ容器に移す、などの全工程が自動で行われた。

デンソーウェーブの人協働ロボットCOBOTTAがクレープの自動調理を行う様子

クレープの注文はタブレットを通して行われ、その内容に合わせたトッピングが可能とのことだ。

この自動調理でCOBOTTAが使用する調理器具には、市販品や3Dプリンタで製作したものが使用されている。またシステムにはカメラやセンサを使用せずシンプルな構成にすることで、運用しやすく小さいスペースで稼働できるという。

デンソーウェーブのブース担当者によると、2者の連携は4年前から行っており、同社は愛知工業大学の学生をエンジニアとして採用した実績があるという。「今後ロボットのニーズは高まっていく中、ロボットを作るエンジニアの育成はロボットメーカーとして重要な課題。作り手がいなければ、結局ロボットは普及しない。だからこそ、大学や工業高校、高専への支援を行って、エンジニアになる人材の育成を行っている」と語った。