5月25日から27日までパシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展」で、村田製作所は、デモカーでの体験コーナーや車内(In-Car)・車外(Out-Car)といったテーマ別展示を通じて、大きく変化を続けるモビリティ市場に貢献する同社の自動車向けソリューションについて紹介した。
デモカーで村田製作所のセンサの働きを体験
村田製作所のブース内には、同社が提供する慣性力センサや超音波センサを搭載したデモカーが設置され、来場者がシートに着席した際のセンサの働きなどが可視化された体験コーナーが設けられていた。
シートの内部には慣性力センサが設置されており、シートにかかった重量や左右の揺れ、また座面にかかる動きから拍動を検出。検出されたデータは、グラフの形でディスプレイに表示された。
また、デモカー後方部分には超音波センサが設置され、車体後方に存在する物体を検出する様子も展示された。超音波センサを用いることで、車体に対して縦と横の両方向について距離を含めた検出を行うことができるという。
車内での子どもの取り残しを防ぐ、Wi-Fiを用いたセンシング技術
車内環境で利用される製品・技術を紹介する「In-car」のコーナーでは、車室内のモニタリングに活用可能なセンシング技術などが展示された。
車内の子ども取り残し事故などを防ぐため、欧米では23年より車室内センシングが義務化されるなど、車内のブラインドスポットを無くし、安全に貢献する技術への需要が高まっている。
村田製作所は、通常通信で広く使用されるWi-Fiの電波をセンサとして活用するセンシング技術を提案。車室内に設置された2台のデバイスが発する電波によって、車内に取り残された乳幼児などの動きを検出できるとした。
村田製作所のブース担当者によると、同社のシステムがもつ特徴として導入ハードルの低さがあるという。一般的なWi-Fi機器にソフトウェアを搭載することで実装が可能で、車内でのチューニングが必要なレーダシステムに比べ、導入がスムーズだと語った。
同システムの導入にはWi-Fi機器が2台必要で、機器自体が不足している場合は追加搭載が必要となる点がネックとなるが、Wi-Fi機器を1台搭載した自動車はすでに一般的になっており、機器を2台搭載した自動車の生産も広がっているといい、今後は導入コストの面でも強みを発揮するとのことだった。
EV向けDCチャージャーのコンデンサやノイズ対策部品を紹介
一方、車外機器に活用可能な製品を展示する「Out-car」のコーナーでは、EV(電気自動車)の充電に用いられるDCチャージャー向け製品のモジュールなどが展示された。
村田製作所は、電子機器メーカーとしてEV市場に貢献する方法を模索する中、DCチャージャーのコンデンサやノイズ対策部品などの提供にたどり着いたという。このコンデンサなどは汎用的な部品であるため幅広い用途に利用することができ、すでに現場への導入も進んでいるという。
同ブースでは、ほかにも「Topics」コーナーとして、Michelin(ミシュラン)と共同開発を行ったタイヤのRFIDタグに関するデモンストレーションなどが行われた。
製品の生産情報や物流ルートなどを製品本体と紐づけるRFIDタグは、近年のトレーサビリティに対する関心の高まりによって重要度が増している。村田製作所は、自社の通信技術を活用し、タイヤ内部に収納されたタグを安定して外部から読み取ることを可能にしたとのことだ。
また、車室内のCO2を計測する空間可視化ソリューション「AIRSual」や、テレワークを行う企業でも活用された疲労ストレス系「MF100」の実演展示なども行われた。
村田製作所のブース担当者は「これらのセンサ技術を製品として直接提供するのが目的ではなく、センサの活用方法をデモカーなどでの実演を通してわかりやすく展示するのが狙い。電子機器メーカーとして、これからの自動車業界の発展へさまざまな貢献手段を見つけていきたい」と語った。