近年の半導体不足は、主に車載や家電などを中心としたレガシープロセスを用いた半導体製品が中心であり、最先端プロセスを用いた半導体はほとんど影響を受けてこなかったとされている。しかし、TSMCおよびSamsung Electronicsが新たに設置している最先端プロセス製造ライン向け製造装置の納期が遅延しており、加えてSamsungでは歩留まり低迷のトラブルもあり、先端プロセス製品の出荷が滞る懸念があると米韓を中心とした複数のメディアが報じている。
韓国の業界関係者の中には、こうした状況が続けば2024年以降、先端プロセスの半導体の供給不足率は最大20%にも達するとの見方も出てきており、早ければ2023年にも問題が本格化するという懸念が出てきているという。
一方のTSMCも、すでに一部の顧客に最先端プロセス向け製造装置の確保が予定通りに進まないため、2023~2024年の半導体生産量を顧客が求めているほどに増やすことができないことを通知したという。
また、新規注文に対する半導体の納品までかかる期間(リードタイム)が、状況によっては2~3年かかるとの説明を一部の顧客にしたとも伝えられている。顧客からの先端プロセス製品に対する需要が、生産能力を超えているという。
背景には、半導体製造装置の製造能力が、半導体業界で進められている新規の工場建設や新規ライン設置で生じている需要にまったく対応できていないことが原因だという。
TrendForceは、今秋発売されるであろうApple iPhone 14シリーズのアプリケーションプロセッサ(AP)について、3nmプロセス品だけでは供給が間に合わないことから、一部モデルについては、5nmの派生プロセスである4nmプロセスを採用したAPが搭載されるとの予測を出しているが、そうした背景にこのような先端半導体不足がある可能性がある。
SEMIでも、半導体製造装置向け半導体の優先供給を提言する事態となっているほか、先端プロセスの製造に必要なEUV露光装置の熾烈な確保競争を各半導体メーカーが進めているとも言われ、訪欧中のSamsungの李副会長の1つの目的が、製造元のASMLとのEUV露光装置の確保に向けた直接交渉とも伝えられている。
そのSamsungは、先端プロセスの歩留まり低迷という技術的な問題をかかえていると噂が絶えない。Samsungファウンドリの4nmプロセスの歩留まりが低いことから、QualcommやNVIDIAなどといったコア顧客がTSMCに注文を回したという噂も出ている。実際、Qualcommは最近の四半期報告書にて、一部の半導体製造業者が一方的に供給量縮小を通知してきたと報告している。