ルネサス エレクトロニクスは、組み込みAIソリューションプロバイダーの米Reality Analytics(Reality AI)を買収する合弁契約を締結したと6月9日に発表した。
当局の承認と一般的な買収手続きの完了をもって、2022年末までに買収が完了する見込みとしている。ルネサスは、この買収によりエンドポイント向けAIソリューションの強化を図り、自社製品への効率的かつ柔軟なAIの導入によるAIoT(Artificial Intelligence of Things)化が進み、早期に市場投入することができるようになるとしている。
エッジでのAI活用ニーズが高まる中、同社はリアルタイムで低消費電力なセキュアMCU(マイコン)およびMPUへのAI搭載に向け、パートナ各社と協力して開発環境やソフトウェアの整備を進めてきた。今回の買収は、そうした組み込み分野におけるAI導入のためのツールやソフトウェアの拡充につながるという。
一方のReality AIは、2016年創業のスタートアップで、自動車、産業、民生機器に向けた非画像領域の高度なセンシングを実現する、高効率な組み込みAIや機械学習(TinyML:Tiny Machine Learning)ソリューションを提供してきた。小さなMCUに組み込むのに最適なサイズで高い性能を実現しており、非視覚センサから得られたデータを収集、解析し、軽量な学習モデルを生成するソフトウェア開発環境「Reality AI Tools」などを提供してきた。これら推論向けAIソリューションは、エンドポイントとしてのさまざまなアプリケーションに実装でき、AI実装のセンサを使用した工場での異常検出や自動車での音声認識にも適用可能だとしている。
ルネサスの発表文には記載されていないが、実はReality AIは、富士通コンポーネントと、製造業向け機械学習ソフトウェアによる非接触型異常振動検知技術を共同開発したり、Infineon Technologiesと自動車に聴覚を与える先進的なセンシング ソリューションを開発するなどの実績がある。
こうした高い水準のAIの推論実行を実現するReality AIの技術と、ルネサスの信号処理を実現する幅広いMCU/MPU製品群を組み合わせることで、機械学習から信号処理までシームレスに実現可能となり、システム開発者が抱える複雑な課題の解決に貢献するという。