本田技研工業(Honda)は6月13日、同社の新事業創出プログラム「IGNITION(イグニッション)」発のベンチャー企業「ストリーモ」設立を発表。また併せて、開発中の1人乗り電動マイクロモビリティ「Striemo」の試乗会を行った。

  • ストリーモが発表したマイクロモビリティStriemo

    ストリーモが発表したマイクロモビリティStriemo

Hondaはオープンイノベーションへの取り組みとして、2017年より新事業創出プログラムIGNITIONを開始。研究所を対象として開始された同プログラムは、2021年以降は国内事業所に勤務する全従業員が応募可能となり、審査を通過したアイデアは、社内での事業化あるいはベンチャーとしての起業が行われる。

2021年にはIGNITIONから起業した初のベンチャー企業として、視覚障がい者の歩行をサポートするナビゲーションシステムを提供する「Ashirase」を設立。今回設立されたストリーモは、同プログラム発のベンチャー企業として2社目となる。

マイクロモビリティは、5km程度の短距離移動における利便性向上や、CO2排出量の削減が期待されている移動手段だが、自転車などに比べ事故率が高く、また事故の多くを単独事故が占めるため、操縦への不安から利用を避ける人が多いのが現状だという。

開始当時エンジニアとしてHondaの二輪車開発に携わり、現在ストリーモの代表取締役を務める森庸太朗氏は、海外でマイクロモビリティでの移動を体験。しかしその際、急発進などの操作性の低さや転倒リスクの高さなどから、「これは乗り物ではない」と感じ、新たな移動の選択肢として安全なマイクロモビリティの開発を開始したとのことだ。

  • ストリーモ代表取締役の森庸太朗氏

    ストリーモ代表取締役の森庸太朗氏

そして森氏は、IGNITIONでの事業化を経て、1人乗り電動三輪マイクロモビリティの新製品Striemoを開発。同製品は、車体の前半分が左右に傾き、後方部分は傾かず静的安定性を保持する独自のバランスアシスト機構により、歩行に近い低速から自転車程度の速度まで、幅広い速度での走行が可能だという。

今回発表されたStriemo Japan Launch Editionは、時速0kmから時速25kmまでの速度で走行可能で、時速約6km、時速約15km、時速約25kmの3段階で速度モードが設定されている。現行法では原動機付自転車に区分され、16歳以上の免許保有者は、ヘルメット着用の上で車道を走行できる。

Striemoの概要動画(提供:Honda)

Striemoは、特に不安定になりやすい低速走行時に、バランスの面で強みを発揮するといい、静止した状態でハンドルを離しても直立することが可能で、低速での走行でも転倒危険性が低いのが特徴とのことだ。

製品発表の同日に開催されたメディア向け試乗会では、多くのメディア関係者がStriemo試作機の運転を体験。八の字走行やスラローム走行、段差への乗り上げなどを行った。著者も実際に試乗を行ったが、初めての運転でもスムーズで小回りの利く走行が可能だという印象を受けた。また試乗会を通して、転倒する様子などは見られなかった。

  • Striemo体験試乗会の様子

    Striemo体験試乗会の様子

  • 森氏も実際に走行デモンストレーションを行った。

    森氏も実際に走行デモンストレーションを行った。

同製品は2022年内の販売開始を予定しており、価格は26万円。6月13日より、ストリーモ公式サイトにて一時先行抽選販売の申し込み受け付けを開始している。また、敷地内移動手段として企業への提案もすでに開始しているという。

森氏によると、2022年4月に衆議院で可決され2年以内の施工が予定されるマイクロモビリティ関連新法案に向け、免許無しでも自転車専用道での走行が可能となるアップグレードパッケージを開発中だという。

また森氏は併せて、「電動キックボードなどの領域に参入するのではなく、マイクロモビリティという移動手段のジャンルを広げていきたい。それに向けて、他社ともライバル関係ではなく、ともに進歩していきたいと考えている」と語った。