日本マイクロソフトは6月9日、同社が実践しているハイブリッドワークなどを紹介するオンラインイベント「ハイブリッドワーク2022」を開催した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は社会に大きな影響を与え、世間の働き方も大きく変化した。過度なリモートワークは人間関係の構築や共同作業において「負の側面」があることが浮かび上がった一方で、出社とリモートの両方を取り入れたハイブリッド型の勤務スタイルが注目されている。
同イベントのテーマは「リモートワークの先へ! 新しい働き方の多様性」。5つのセッションを用意し、日本マイクロソフトが実践してきているハイブリットワークの全貌や、2022年にリニューアルしたばかりの品川オフィスを初公開した。
トップバッターを務めたのは、日本マイクロソフト 執行役員常務クラウド&ソリューション事業本部長の手島主税氏と、同事業本部 事業戦略統括マネージャーの織田開智氏の2名。「マイクロソフトはなぜ“ハイブリッドワーク"に挑むのか? ~ パンデミック対応で学んだ光と影 ~」という講演テーマで、同社のワークスタイルの変革による成果を発表するとともに、今後のハイブリッドワークのあり方についての考えを示した。
日本マイクロソフトは2011年に新宿や赤坂にあったオフィスを品川に集約。そして、2018年に社会・企業・社員の3つを軸としたワークスタイルの変革を発表した。
続いて、新型コロナウイルス感染症拡大を契機として、2020年にオフィスの改修プロジェクトを発足。このタイミングで、以前から行っていたリモートワークに加え、自分で働く場所を都度選べるハイブリッドワークを解禁したという。2年がかりの改修を終えた新オフィスは、生産性を上げることはもちろん、社員の心身のサポート、コラボレーションの促進、ITのフル活用の実現を目指して設計された。
手島氏は、「リモートワークは確かにメリットが多い。場所を選ばずに働けるし、今まで通勤に費やしていた時間を業務に回せる。しかし、ずっとリモートワークでは気が滅入ってしまう。リモートワークも活用しつつ、主体性を強くもってオフィスに回帰することが重要だ」と、ハイブリッドワークに挑む理由を語った。
リモートワークの「負の側面」は数字に出ている。同社が社員向けに実施したアンケート調査結果によると、COVID-19拡大の前に入社した社員と後に入社した社員を比較してみると、後に入社した社員の方がさまざまな数字が低下していることが分かった。具体的には、人間関係の満足度が33%、業務量が34%、会議への参加が11%、上司との面談が17%低かった。
「オンラインによるコミュニケーションだけで人間関係が構築できないままだと、仕事がはかどらず、マネージャーも仕事を与えづらい」(織田氏)
一方で、コロナ禍前の勤務スタイルに戻りたいと回答した社員はわずか2%だった。完全リモートが35%で、ハイブリッドワークが63%と一番多い結果となった。前述したリモートワークの負の側面を感じながらも、多くの社員が従来の働き方を希望していないことが分かった。
そこで同社は、一番回答の多かったハイブリッドワークを推進することを決め、ハイブリッドワークの成熟度を4段階に分けた。フリーアドレス化に加え、オフィスの全室をハイブリッドルームにするほか、最終的には交流拠点を全国47都道府県に展開し、地域との交流もできる環境にしていく。
オンラインの面においても、引き続きリモートワークを実施すると同時に、AI(人工知能)やAR(拡張現実)などの技術を活用し、最終的にはメタバース空間でも仕事ができるようにしていく。
織田氏は「ハイブリッドワークを実現するためには多様性と主体性の最大化がとても重要」と説明する。ハイブリッドワークの多様性とは、働く場所や手段の選択肢を広げ、仕事と生活のバランスの取りやすさを実現すること。
この多様性に個々人の主体性を掛け合わせることで本当の意味でのハイブリッドワークが実現されるというのだ。「個人のアイデンティティでもある主体性を強く持ち、目的は何なのかを常に考える必要がある。この社員の主体性をどう引っ張っていくかが今後の宿題だ」(手島氏)