ガートナージャパンは6月8日、日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)におけるイン/アウトソーシングの動向に関する調査結果を発表した。
同調査では、あらかじめ8つの分野を提示してDXの取り組み状況を尋ねた。その結果、すべての分野で、回答企業の過半数以上が何かしらのDXに取り組んでいる状況が明らかになった。最も高い割合の取り組みは、「既存ビジネスにおけるコスト削減やオペレーションの効率化」(74%)で、「既存の商品やサービスの機能や品質の強化」や「既存ビジネスにおける顧客体験価値や付加価値の向上」のほか、関連する「データやITインフラ等の基盤の整備」の取り組みも高い結果となった。
企業のイン/アウトソーシング動向については、「戦略・企画立案」「設計・開発・実装」「運用・管理・保守」の3つのフェーズごとの実施状況を聞いた。
その結果、戦略・企画立案は、社内リソースを中心として進めている企業が約60%に上った(「大部分を社内のリソースで対応している」「社内リソース中心だが、社外リソースを部分的に補完目的で活用している」) 。一方、後工程となるシステムの設計・開発・実装では、「大部分を社外のリソースに委託している」と回答した割合が48%と高い傾向を示した。
ガートナージャパン アナリストでシニア プリンシパルの中尾晃政氏は調査結果について、「関連するスキルを有する人材不足を主な背景として、多くの企業では、上流工程においても社外のリソースを活用せざるを得ない状況であると見られる。上流工程では、社外リソースを活用することで、外部から新しいアイデアや先端技術などの知見を得られる一方で、社外のスキルに依存してしまい、知見やノウハウが社内に蓄積されないといったリスクがある点にあらかじめ留意する必要がある。また、従来よりも、社内リソースとの連携スピードや柔軟性を求められるため、社外のリソースを活用する際は、連携体制の実現性や、ベンダー依存のリスクへの対応策なども併せて検討しておくことが重要だ」とコメントした。
同調査では、今後のソーシング方針のほか、DXにおける社外のリソースの選択肢についても調査した。内製化を進める傾向を示した企業では、社外リソースを補完的に活用しつつも、今後は社内リソースの育成や強化を目指そうとする様子が見受けられたという。
一方、社外のリソースでは、新しいビジネス・アイデアや、新しい技術のノウハウを提供できるベンダーを積極的に開拓している企業の動きも伺えたという。具体的にはテック・ベンチャーやスタートアップ、異業種/競合する企業、大学や各種研究機関との連携など、多彩なソーシングのオプションの活用も視野に入れている企業も同調査では一定数見受けられた。
同調査は、2022年4月にWebで実施され、ITユーザー企業に、ITシステムの構築/導入/保守/運用およびサービス委託先の選定に関与している担当者のみを対象とした(有効回答企業数:400社)。なお、調査では、DXを「デジタル技術を用いた既存のビジネスモデルの最適化や新たなビジネスモデルの構築」と定義した。