先日、フィンランド・ヘルシンキにおいて「Sphere 2022」を開催したWithSecure(ウィズセキュア、旧F-Secure)。本稿では各国のメディア向けに行われたWithSecure CRO(Chief Research Officer)のMikko Hypponen(ミッコ・ヒッポネン)氏のプレゼンテーションの内容を紹介する。同氏をご存知の人も多いとは思うがセキュリティ業界において著名な人物で、さまざまなイベントで講演しており、TEDにも複数回登壇している。

  • WithSecure CROのMikko Hypponen氏

    WithSecure CROのMikko Hypponen氏

インターネットを始めた最初の人たち

冒頭、ヒッポネン氏は同社に入社してから、これまでを振り返り「私は長い間この業界にいます。1991年、この会社がまだ小さなスタートアップだったころ、社員番号6番として入社しました。ですから、この会社の変遷を見てきました。私たちがどこへ行こうとしているのか、情報セキュリティ産業で何が起こるのか、サイバー犯罪組織で何が起こるのか、今後10年で何が起こるのかなど、これまでで一番大きな変遷を見ていると思います」と述べた。

同氏は「私たちの周りには大きな技術革新が起きていますが、渦中にいると革新がどれほど大きなものかを理解するのは難しいものです。そこで私は何が起きているのかを知るために、遠い未来から現代を眺めてみました。未来の歴史家が、2000年代初頭の私たちの時代について、何百年も先の未来から歴史書を書いていると想像してください。私たちの世代について最初に語られるのは『インターネットを始めた最初の人たちである』ということでしょう」と続ける。

同氏によると、インターネットは最高であると同時に最悪の出来事でもあり、良い面として多くの新しいビジネスが生まれ、接続性が向上し、新しいエンターテイメントが生まれた一方で、悪い面として犯罪がボーダーレスになり、危機や戦争がネットの世界にまで広がっているという。

ヒッポネン氏は「グローバルなネットワークのおかげで陰謀論はかつてないほど繁栄しています。インターネットはマイノリティに多大な支援を与えますが、これは破壊的なマイノリティ、過激派、テロリスト、学校の銃撃犯も同じです。そのほかのどのような種類のマイノリティも、自分たちのフォームを見つけることができるのです。これは最高の出来事であり、最悪の出来事でもあります」と念を押す。

また、同氏は「残念ながら良いところだけを選ぶことはできません。さまざまな意味で最高と最低があり、便利であるときもありますが、なくなると途端に困る、というシナリオに陥ってしまうのです。最終的には、それなしでは生きていけなくなるのです。現在、インターネットは重要ではありますが、そのような状態にはなっておらず、決定的なものではありません」と説明する。

現代の義務化された技術の一例としてヒッポネン氏は電力を挙げている。約150年前に大半の西洋国では電力網が整備され、電力網が機能しなくなると社会は成り立たなくなり、市民の生活どころか移動することもできず大混乱に陥るとも話す。

同氏が電力網の話を引き合いに出した理由としては、接続性について同じ決断を人類は下しているからとしている。今後、人類が使うすべてのシステム、すべてのテクノロジー、すべての未来の世代は、接続性があるかどうかに依存しており、もし接続性がなければ社会は安全性を保てなくなる決断をしているという。