プロセサには、汎用の計算を行うCPUに加えてAI計算を行う専用プロセサを付けるという実装が一般的になってきている。米国のGAFAMはこのようなプロセサの開発に力を入れており、我が国でも、AI専用チップの開発に力を入れる必要があり、このような専用チップを開発する必要があるという認識から「AIチップ設計拠点」を作ることになった。
この設計拠点は東京大学(東大)の浅野キャンパスに置き、東大と産業技術総合研究所(産総研)の研究者を配置して設計を行う計画である。この設計拠点を率いるのは産総研 AIチップデザインオープンイノベーションラボラトリ招聘研究員の内山邦男氏である。
5月31日から6月2日にかけて東大の浅野キャンパス(およびリモート)で開催されたRISC-V Days Tokyo 2022 Springにおいて、AIチップ設計拠点に関してその内山氏が発表を行った。
半導体のクロックや単体コアの性能は2020年代の中頃には頭打ちになる。このPost Mooreの時代には、別の性能改善要因を見つける必要がある。
最近ではAI処理を専用アーキテクチャのハードウェアで実行する方法での性能向上が注目されている。
次の表のように、米国だけでなく、中国、欧州、台湾、韓国など各国は半導体の開発力の強化に力を注ぐようになってきている。
このような情勢の中で、内山氏が率いるAIチップ設計拠点は、AIチップ開発の加速のためのイノベーション推進事業として、AIチップ開発を加速する共通基盤技術の開発を行うために作られた組織である。
AIチップを設計するには高額なEDAツールやIP、論理検証装置などが必要であり、AIチップの開発に当たって、これが大きなハードルになっている。AIチップ開発拠点の任務は、AIチップの設計や検証を行う環境を用意し、AIチップ開発のハードルを下げて、中小企業でもAIチップの開発に取り組みやすくすることである。このような環境を作っておけば、AIチップの開発を始めることが容易になり、超スマート社会の実現に貢献すると考えられる。
AIチップ開発拠点は東大の浅野キャンパスに置き、ふくおかIST、産総研の人工知能研究センターなどにサテライト拠点を置く。そして、拠点にはAIチップの設計、検証環境を用意し、AIチップの設計技術や検証手法などの開発も行う。