シャープは6月6日、実用サイズの軽量かつフレキシブルな太陽電池モジュールにおいて、変換効率32.65%(モジュール面積:965cm2、最大出力:31.51W)を達成したことを発表した。
同成果は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「移動体用太陽電池の研究開発プロジェクト」の「太陽光発電主力電源化推進技術開発/太陽光発電の新市場創造技術開発/移動体用太陽電池の研究開発(超高効率モジュール技術開発)」によるもの。
太陽光発電や風力発電、地熱発電などの再生可能エネルギーからの電力供給を増やすことで、CO2の排出抑制につなげることが期待されている。一部の自動車でも電気自動車(EV)を中心に、太陽電池の搭載がオプションで用意されるなどの動きもあるが、シリコン結晶ベースの太陽電池は重量があるほか、曲面対応が難しいという課題があり、より柔軟かつ軽量、低コストな太陽電池モジュールの実用化が求められるようになっている。
今回の研究では、太陽電池セルを薄いフィルムで挟んだ構造に変更することで、軽量かつフレキシブルな特長を兼ね備えたモジュールを実現したという。モジュールは実用化に向けて十分なサイズの約29cm×約34cm(面積965cm2)で、重量も約56g(0.58kg/m2)という軽量化が達成された。
シャープの化合物3接合型太陽電池セルは、In、Ga、Asをボトム層とする3つの光吸収層を積み上げることで、効率的に太陽光を電気に変換できる独自構造が採用されている。この構造のセルでは、2013年4月に小サイズ(面積1.047cm2)で37.9%の変換効率を達成しているほか、2016年には実用可能なサイズ(面積27.86cm2)の太陽電池セルを用いたモジュール(面積968cm2)にて、変換効率31.17%が達成されている。
今回の取り組みは、この2016年に作製されたモジュールに搭載された化合物3接合型太陽電池セルの平均変換効率の向上(約34.5%→約36%)と、モジュール内のセル充填率の改善を図ることで、実用サイズモジュールでの変換効率を32.65%まで向上させることに成功したものだという。
なおシャープは今後も、EVや宇宙・航空分野などの移動体への搭載に向けて、引き続き太陽電池モジュールの高効率化および低コスト化に関する研究開発を進めていくことで、移動体分野における温室効果ガスの排出量削減に貢献していくとしている。