東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)は6月6日、遠方宇宙の実際の観測データに基づくシミュレーション「COSTCO(コストコ)」を開発し、宇宙の大規模構造がどのように進化していくのか、特に高赤方偏移で観測される原始銀河団が、実際に現在の宇宙で観測されている銀河団に成長するのか、あるいはフィラメントなど別の構造に進化していくのかをシミュレーションした結果を発表した。

同成果は、Kavli IPMUのメティン・アタ特任研究員、同・キーガン・リー 特任講師を中心とした国際研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の天文学術誌「Nature Astronomy」に掲載された。

宇宙論的数値シミュレーションは、宇宙の極初期における微小な物質分布のゆらぎから始まり、現在観測されている複雑な宇宙の大規模構造にまでどのように進化してきたのか、その過程を理解するためのツールとされている。しかし、これまでの多くのシミュレーションは実際に観測される宇宙を再現するものではなく、観測データを統計的に説明するために使われていることが多いという。

そうした中で、実際に観測される宇宙の構造を再現することを可能にする「制約条件付き」シミュレーションも開発されているが、近傍の宇宙の構造に適用されたもののみで、これまでは遠方宇宙のデータ、つまり昔の宇宙の姿に適用したものはなかったという。

そこで研究チームは今回、現宇宙における宇宙最大の自己重力系天体である銀河団の祖先にあたる、遠方宇宙に存在する巨大な原始銀河団に着目することにしたという。そして、ろくぶんぎ座方向の110億年かなたにある領域「COSMOSフィールド」の観測データを用いて、制約条件付きシミュレーションを実行したという。この今回の制約条件付きシミュレーションは、「COnstrained Simulation of The COSMOS Field(COSMOSフィールドの制約条件付きシミュレーション)」を略してCOSTCOと命名された。