三洋貿易は6月3日、オンラインで車載センサのビジネス戦略発表記者会見を開催。同会見内で、車載センサ事業の拡大に向け、IEE製の乗用車およびバス用子ども置き去り防止センサを日本市場に導入すると発表した。
三洋貿易は、自動車の部材や建物の外装塗料に用いられる原材料など、身の回りの幅広い分野で利用される商材を取り扱う企業で、自動車などの「モビリティ」、合成ゴムなどの「ファインケミカル」、再生エネルギーに関連する「サステナビリティ」、食品添加物などの「ライフサイエンス」の4市場をターゲットとしている。
今回の会見では、モビリティに含まれる自動車分野について発表が行われた。
これまで三洋貿易は自動車分野として、直接接触する部材の快適性を向上させる製品を中心に取り扱っていたという。そして同社は今後、安心・安全に関する製品についても注力していくとしており、中でも解決すべき課題として、子どもの車内置き去りによる事故を挙げた。
猛暑日が増加傾向にある中、日本国内では自動車内に取り残された子どもが熱中症により亡くなる事故が継続的に発生しており、アメリカでも1990年から2021年まで、年平均30人以上の子どもが亡くなっている。
三洋貿易はこれらの事故の原因について、専門家の見解や過去事例の分析から、育児にかかわる人々の負担増加による無意識下の不注意の可能性があると考え、欧州やアメリカで導入検討が進む子ども置き去り検知センサの国内取り扱いを強化・拡大することで、誰ひとり取り残さない社会の実現を目指しているという。
このため同社は、センサ専業メーカーIEEが開発したミリ波レーダによる子ども置き去り検知センサ「VitaSense」および「LiDAS」の2製品について、取り扱いを強化するに至ったとした。
IEEはルクセンブルクに本社を構えるセンサ専業メーカーで、シートベルトリマインダセンサやハンドルのハンズオフ検知センサなど、車載向けセンサの生産を行う。同社は2005年に三洋貿易との間で国内販売代理店契約を締結し、2012年に日本法人としてIEEセンシングジャパンを設立している。
乗用車用レーダセンサのVitaSenseは、60GHz帯のレーダシステムで、毛布を被った新生児を検知することができる高精度を持ち、アメリカの無線機器認証であるFCC認証を取得している。車内の天井裏に搭載され、置き去りを検知すると、ライトの点滅やクラクションなど段階的な警告を発生させるという。
一方バス用子ども置き去り防止センサのLiDASは、レーダ周波数は24GHzで、スクールバスや送迎バン内に後付けすることで使用が可能。幼稚園のバスなどへの導入へ向け、地方自治体などとの連携を行うとした。
VitaSenseは2025年、LiDASは2023年からの納入開始を目指し、2027年までの5年間で、前者は年間30万台、後者は2,000台への搭載を目指すとのことだ。
今回登壇した、三洋貿易の産業資材事業統括部長兼事業開発室長を務める平澤光康氏は、販売目標達成に向けての課題として、VitaSenseとLiDASの知名度が不足していることを挙げた。しかしその改善策として、2022年7月に子ども車内置き去りに関する独自意識調査の結果について会見を行うなど、メディアへの説明の機会を増やす予定だとした。