無線ルータの開発・販売などを手掛けるバッファローは6月2日、法人向けネットワーク製品に関する事業戦略説明会を開催した。同社は「人手・IT人材不足」「BCP(事業継続計画)対策」「テレワークのインフラ構築」の3つの軸を中心に商品・サービスを拡充し、法人事業を加速するという。

ユーザーの声を商品に反映してきた20年間

バッファローが法人向けネットワーク製品事業に参入したのは2001年。同年に法人向け無線アクセスポイント「AirStationPro 」、2004年には法人向けNAS(ネットワークHDD)「TeraStation」の販売を開始し、それぞれ累計出荷台数が142万台、115万台を突破している(2021年時点)。

同社は無線LAN、有線LAN、ルータ、NASの4種類の法人向け商品を展開しており、SOHOから大企業まで企業規模に合わせた商品ラインアップをそろえている。ほかにも、NASの運用管理からリプレース、廃棄までワンストップで提供するリモート管理サービスや、設計・施工・保守サービスまで幅広く展開している。同社の製品は教育機関、医療機関、自治体などさまざまな業種業界で導入されている。

  • 法人向けネットワーク商品ラインアップ

    法人向けネットワーク商品ラインアップ

「すべての商品を自社開発しているのが当社の強みだ。20年間、ユーザーからの声を迅速に商品に反映させてきた」と、バッファロー取締役の石丸正弥氏は熱く語った。

  • バッファロー取締役の石丸正弥氏

    バッファロー取締役の石丸正弥氏

法人事業を強化する3つの軸

IT人材不足の解決

同社は法人事業の戦略として、まず企業が抱えるIT人材不足の解決を掲げる。サービス員や情報システム担当の働き方改革、人手不足による保守・管理負担の軽減を目指す。具体的には、同社が提供するリモート管理サービス「キキNavi」、管理支援ツール「法人ポータル」の拡充に注力する。

キキNaviは、NAS、無線アクセスポイント、スマートスイッチに対応している機器の保守・管理を支援する無料サービスで、企業内での稼働状況の把握や共有、遠隔操作、設定情報の保存などができる。2022年3月末時点で、登録法人は約5200社、登録台数は約2万5000台を達成している。

法人ポータルは、2020年9月から提供している無料サービスで、機器の納入後の運用サポートを行うものだ。保守契約や納入の管理、キキNaviと連携ができ、登録台数は12万台を超えている(2022年3月末時点)。

  • 「キキNavi」と「法人ポータル」のサービス概要

    「キキNavi」と「法人ポータル」のサービス概要

さらに今回、無線アクセスポイントの新サービス「キキNavi クラウドゼロタッチ」の提供を今冬に開始すると発表した。同サービスは、外装箱を開梱することなく、キキNaviへの無線アクセスポイントの一括登録や、キキNaviからの機器設定情報の反映が可能な無料サービス。導入先のユーザーが機器をインターネットにつなぐだけで、設定が自動完了し運用が開始できるというものだ。

  • 「キキNavi クラウドゼロタッチ」のサービス概要

    「キキNavi クラウドゼロタッチ」のサービス概要

ユースケースとしては、店舗やホテルなど複数拠点に展開するチェーン店などが考えられる。機器を開梱することなく、本社(または管理会社)にて、キキNaviの登録と設定を行うことができ、機器を各店舗に発送し、取り付けることですぐに運用開始できる。また、機器の故障などによる交換時も、本社側での準備作業の手間を低減できるといったメリットもある。

BCP対策への支援

法人事業強化の2つ目の軸はBCP対策への支援だ。先述したキキNaviと法人ポータルに加え、同社はデータの復旧サービスにも注力している。

  • バッファローはNASの運用管理からリプレース、廃棄までワンストップで提供する

    バッファローはNASの運用管理からリプレース、廃棄までワンストップで提供する

「『データの一生を守る』というコンセプトで初期導入から運用管理、万が一の障害への対応、次のモデルへのリプレース、最終的なデータの消去までワンストップで提供している」と、事業本部 法人マーケティング部長の富山強氏は説明した。

  • 事業本部 法人マーケティング部長の富山強氏

    事業本部 法人マーケティング部長の富山強氏

同社は2022年2月に、データを災害・障害から保護するBCP対策に最適なサービス「キキNavi クラウドバックアップ」をリリース。同サービスは、同社のNAS内のデータをクラウドにバックアップするものだ。

キキNaviから遠隔でクラウドバックアップの設定管理や進捗の確認ができ、現地訪問の工数削減にもつながるとしている。「NASのクラウドバックアップを提供しているのは当社しかない」(富山氏)

テレワーク環境の構築支援

そして、最後の軸が「テレワーク・業務デジタル化のインフラ構築」の支援だ。具体的には、VPNルータや対応無線LANアクセスポイントなどの商品を強化し、大企業に比べて進んでいない中小企業のテレワーク導入や業務のデジタル化を後押しする。

バッファローは無償保証最大5年のVPNルータを2022年5月より販売開始。10GbE(ギガビットイーサネット)対応の有線モデルとWi-Fi6対応の無線モデルの2機種を用意。キキNaviによるリモート管理に対応しており、IP sec(アイピーセック)による拠点間VPNにも対応している。

  • 無償保証最大5年のVPNルーター2機種を2022年5月より販売開始

    無償保証最大5年のVPNルータ2機種を2022年5月より販売開始

さらに、同社はテレワークで必須になるVPNリモートアクセスに対応したファームウェアを2022年7月にリリースする予定。同ファームウェアにバージョンアップすることで、L2TP over IP secによる安全な接続を実現し、自宅からオフィスのネットワークにVPN接続することが可能になる。自宅でのテレワークや外出先からのアクセスに対応しており、企業のテレワーク環境の構築を支援する考えだ。

Wi-Fi6に対応した無線LANアクセスポイント

また、Wi-Fi6に対応した無線LANアクセスポイントも2022年8月上旬より中規模企業向けに販売開始する。富山氏は「現在、消費者市場で普及しているWi-Fi6は、今後1年以内に法人市場でも普及するはずだ。それを見越して新モデルを開発した」と語った。

  • Wi-Fi6に対応した無線LANアクセスポイント新商品「WAPM AX4R」

    Wi-Fi6に対応した無線LANアクセスポイント新商品「WAPM AX4R」

新商品の名称は「WAPM AX4R」。商品価格は定価で5万4780円。同製品はWi-Fi6やキキNaviによるリモート管理に対応しているだけでなく、便利な機能が多々搭載される。

具体的には、特許取得済みの技術である「DFS障害回避機能」が搭載される。これは、飛行機や気象アンテナからのレーダー波を検知した際に、瞬時に干渉しないチャンネルへと自動的にチャンネルを切り替える機能だ。無線LANの約1分間の停止を回避するという。

  • 「DFS障害回避機能」

    「DFS障害回避機能」

また、多台数端末への通信のバラつきを制御する「公平通信制御機能」や、来客用にWi-Fiを提供できる「ゲストポート機能」も搭載。これらの機能により、例えば、多数のタブレットを利用する授業で、同時に動画再生しても再生の遅延が生じにくく、医療機関などにおいては、来訪者のパソコンやスマートフォンのWi-Fi通信など、一時的にインターネット接続だけを許可することができる。

  • 「公平通信制御機能」22年末にWi-Fiの新規格「Wi-Fi6E」に対応するモデルをリリースするという。「Wi-Fi6E」とは、6GHz、5GHz、2.4GHz対応するトライバンドモデルのこと。

    「公平通信制御機能」

  • 「ゲストポート機能」

    「ゲストポート機能」

事業戦略説明会の終盤、今後の新商品の紹介も行われあ。2022年末には、Wi-Fiの新規格「Wi-Fi6E」に対応するモデルをリリースするという。「Wi-Fi6E」とは、6GHz、5GHz、2.4GHz対応するトライバンドモデルのこと。

現在総務省は、周波数帯域の見直しを進めており、2.4GHz、5GHzに加え、6GHzの開放の法改正を行おうとしているという。今まで使えなかった6GHzが開放されることで、さらなる利便性の向上が期待され、160MHz幅のチャンネルが新たに3つ開放される見込みだ。広い周波数帯を利用することで、チャンネル設計がより柔軟になる。

  • 総務省は、周波数帯域の見直しを進めている

    総務省は、周波数帯域の見直しを進めている

富山氏は「間違いなく6GHzの周波数帯は解放される。恐らく2022年秋ごろを目途に法改正が行われるだろう」と予測していた。