大阪公立大学(大阪公大)と大阪大学(阪大)は6月1日、最小フェリ磁性に対する「近藤効果」に着目し、理論的な解明を試みた結果、温度などのパラメータに依存して、複数の量子もつれ状態を経由した近藤効果が発生することを明らかにしたと発表した。
また、通常は磁性体を通した電気伝導は近藤効果により増幅するが、最小フェリ磁性体の場合は抑制されることを発見したことも併せて発表された。
同成果は、大阪公立大大学院 理学研究科の西川裕規講師、阪大大学院 理学研究科の徳田将志大学院生(日本学術振興会特別研究員)らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する物性物理とその関連分野全般を扱う学術誌「Physical Review B」に掲載された。
フェリ磁性とは、応用上重要なフェライトなどの持つ磁性状態のこととされている。結晶中に逆方向の2つの磁化があり、互いの磁化の大きさが異なるため全体として磁化が存在する。そして、電気抵抗、磁性、超伝導など、物理学の分野で重要な現象として知られているのが近藤効果であり、磁性原子を少数含む希薄磁性金属合金で、自由電子がその磁性と競合する効果(抵抗極小現象)のことをいい、2022年3月に他界した近藤淳博士がその仕組みを解明したことでその名がつけられた。
この近藤効果を研究することは、基礎的研究に留まらず応用面において重要視されている。近年、ナノテクノロジーの発展により「量子ドット」と呼ばれる人工的な磁性原子に相当する系を実際に作製することが可能となり、磁性に対する近藤効果についても、より複雑な内容を理論および実験の両方で検証可能となってきている。
そこで研究チームは今回、T字型の格子状に配置した4つの量子ドットで発現する最小のフェリ磁性状態に着目することにしたという。これにリード線を接続すると、リード線から来る自由電子の「磁石としての性質」が近藤効果によってフェリ磁性を打ち消そうとする。また近藤効果が起こると、通常は電気伝導度が増幅する。そこで今回、最小フェリ磁性状態に近藤効果が起こるとどうなるかが理論的に研究されることとなった。