工学院大学、愛媛大学、アルマ望遠鏡の3者は5月31日、最初にクェーサーと確認された天体で、なおかつクェーサー中で最強の電波を放つ「3C273」のすぐそばに、そのおよそ8.5万分の1という暗く淡い電波を放つ天体があることを、特殊な解析手法を用いて検出することに成功したと発表した。
同成果は、工学院大 教育推進機構の小麦真也准教授、国立天文台(NAOJ) ハワイ観測所の鳥羽儀樹特任助教(NAOJフェロー)、愛媛大 宇宙進化研究センターの松岡良樹准教授、NAOJ アルマプロジェクトの斉藤俊貴特任助教、NAOJ ハワイ観測所の山下拓時プロジェクト研究員らの共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。
3C273は地球から24億光年の距離にある銀河の中心核にあるクェーサーであり、その正体は超大質量ブラックホールで、周囲の物質を貪欲に飲み込むことで、電磁波を強烈に放射しているとされている。1950年代にはすでに電波源として確認されており、1963年に世界で初めてクェーサーとして確認された歴史のある天体として知られている。
今なお、最強の電波を放つクェーサーとして知られており、その電波のみならず、可視光なども明るすぎることが理由で、発見されてからこれまでの長い間、自身が付随している暗い母銀河についてはあまり研究が進められてこなかったという。
そこで研究チームは今回、観測データを解析するにあたって、3C273自身の明るさを電波強度の基準とする自己較正と呼ばれる方法を適用。さらに、電波の周波数や時間による変動を細かく補正することによって、天体の電波が周囲に漏れ込んでノイズとなることを極力抑え込むことに成功したという。