東京大学(東大)は5月31日、H7N2ネコインフルエンザウイルスが、獣医師を含む2名への感染が米国にて報告されたことを受け、ヒトの呼吸器で効率よく増殖するようになるためにはどのような変異が必要であるのかを調べたところ、ウイルス表面のエンベローブ糖タンパク質の「赤血球凝集素」(HA)および「ノイラミニダーゼ」(NA)に複数の変異が確認されたことを発表した。

また、さらに詳細な調査をしたところ、HA膜融合活性のpH要求性とHA-NA機能バランスをヒト呼吸器細胞のレセプター環境に適合させる変異が、その増殖性の獲得に重要であることが判明したことも併せて発表された。

同成果は、東大大学院 農学生命科学研究科 獣医学専攻の関根渉大学院生、同・上間亜希子特任助教、同・神木春彦大学院生(研究当時)、同・石田大歩大学院生(研究当時)、同・松郷宙倫特任助教(研究当時)、同・村上晋准教授、同・堀本泰介教授らの研究チームによるもの。詳細は、ウイルスに関する全般を扱う学術誌「Viruses」に掲載された。

2016年から2017年にかけて、米国・ニューヨークのシェルターネコ500匹以上に感染して呼吸器疾患をひき起こしたH7N2ネコインフルエンザウイルスは、A/H7N2低病原性鳥インフルエンザウイルス由来であることがわかっている。このときは軽い呼吸器症状ではあったが、獣医師を含む2名への感染も報告されている。そこで研究チームは今回、このネコウイルスがヒトの呼吸器で効率よく増殖するようになるメカニズムを調べる目的で、ウイルスをヒト呼吸器A549細胞で連続継代することにしたという。