スーパーコンピューターの計算速度の世界ランキング「TOP500」が独ハンブルクで開かれた国際会議で30日、発表され、米オークリッジ国立研究所の「フロンティア」が史上初めて毎秒100京回(京は1兆の1万倍)を意味する「エクサ級」を達成して1位となった。昨年11月の前回まで4連覇した理化学研究所の「富岳(ふがく)」は2位に後退した。
TOP500は性能評価用プログラムの処理速度を年2回競うもの。最新版で、米エネルギー省がクレイ社などと新たに開発したフロンティアが毎秒110京2000兆回と、富岳の44京2010兆回に大差をつけてトップに躍り出た。
日本は先代「京(けい)」が2011年に連覇した。中国や米国の後塵を拝した後に2020年6月、富岳で8年半ぶりに首位に。その後も独走を続けたが、新顔にトップの座を明け渡した。
2010年代を通じ、毎秒100京回に相当する1エクサフロップス(エクサは10の18乗)の計算ができる次世代エクサ級スパコンの開発を、各国が目指してきた。TOP500は今回の発表で「富岳も理論性能のピークがエクサの壁を超えていることを考えると、エクサ級マシンと呼ぶべきだ。しかし(TOP500の)ベンチマークテストでこれを実証できたのはフロンティアだけだ」と評価した。ただ、TOP500への申請がないものの、中国が既に複数のエクサ級スパコンを開発済みとの情報もある。
オークリッジ国立研究所の計算科学の担当者は「世界中の科学者や技術者がフロンティアの並外れた計算速度を利用し、私たちの時代の最も困難な問題を解決する」とした。
発表はまた、上位500台のうち3分の2近くを中国と米国が占めたと指摘した。日本はこの2カ国に続く34台だった。
富岳は理研と富士通が共同開発。理研計算科学研究センター(神戸市)の京の跡地に設置され、2020年4月からの試験利用を経て昨年3月に本格稼働した。文部科学省「成果創出加速プログラム」のほか、一般公募や国の重要課題での利用などが進んでいる。
富岳はTOP500に加え、産業利用に適した計算の速度を競う「HPCG」、グラフ解析の性能を競う「Graph(グラフ)500」、人工知能(AI)の深層学習に用いられる演算の指標「HPL-AI」で前回まで1位で、多分野での優位性を示してきた。今回はHPCGとGraph500で1位を維持し、HPL-AIでフロンティアに次ぐ2位となった。
松岡聡センター長は「今回の結果は、富岳が初登場から2年経過しても最高性能と汎用性を両立させた世界屈指のスーパーコンピューターであることを示した。卓越した実用性でデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル技術で生活を豊かにすること)をもたらし、(超スマート社会の)Society(ソサエティー)5.0やSDGs(国連の持続可能な開発目標)を実現させるインフラとして、多くの課題を解決していく」とコメントした。
TOP500のランキング上位は次の通り(名称、設置組織、国、毎秒の計算速度)。
1位 フロンティア オークリッジ国立研究所(米国)110京2000兆回
2位 富岳 理研計算科学研究センター(日本)44京2010兆回
3位 ルミ 欧州高性能計算共同事業体(フィンランド)15京1900兆回
4位 サミット オークリッジ国立研究所(米国)14京8600兆回
5位 シエラ ローレンスリバモア国立研究所(米国)9京4640兆回
※以下、日本勢上位
19位 ABCI2.0 産業技術総合研究所 2京2210兆回
20位 ウィステリア・ビーデック01(オデッセイ) 東京大学 2京2120兆回
35位 トキ・ソラ 宇宙航空研究開発機構 1京6590兆回
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