矢野経済研究所は5月31日、世界の量子シミュレーション、量子センシング、量子暗号通信、量子生命科学、量子物性、量子材料、量子AI(人工知能)の7分野の量子技術に関連した技術・サービス市場の調査結果を発表した。これによると、2025年における量子技術に関連した技術・サービスの世界市場規模は3兆4618億円になり、2050年には70兆3640億円まで拡大するという。
量子技術は従来、理論物理学など学術分野での利用が中心だったが、量子の振る舞いやその影響など量子力学を利用した身近な製品や関連するデバイス、制御などの技術としての活躍が始まっているという。実際に量子技術を使用した製品となって登場し始めており、今後も増加が期待できるとのこと。
量子生命科学の注目分野として同社は、生体ナノ量子センサーを挙げる。ナノメートル・サイズの特殊なダイヤモンドNV(Nitrogen-Vacancy)センターを使用して、生きた細胞内にある生体分子が起こすナノメートル・スケールの回転運動を3次元で計測する新たな量子技術が開発されている。
実際に、生体ナノ量子センサーを用いた位置変化を伴わない生体分子の回転運動として、ATP(Adenosine TriphosPhate、アデノシン三リン酸)アーゼがATPを合成する時の回転運動や、抗がん剤がターゲットとなるがん細胞表面の受容体に結合した時の動きの変化を計測することに成功しているという。
このような生体ナノ量子センサーは、世界最小の3次元回転センサーとして、新薬研究や再生医療の幹細胞モニタリングなど生命科学の新たな計測ツールとして、幅広い活用が期待されているとしている。
量子技術は産業界の多岐にわたる分野からの注目が高まりつつあり、世界各国での研究開発予算も増加している。今後も、新たな関連プレーヤーの参入や社会実証事例が続いていくが、同社は、本当の価値を生み出すためには、さらにもう一歩踏みこんだ成果を挙げることが必要になると指摘している。