花粉の時期はいつから、いつまで?
季節は絶賛夏への滑走路を建設中だというのに、一体筆者は何を眠たいことを言っているのだ、という声が聞こえてきそうなタイトルである。
確かに、夏への前売り入場券を購入し、先んじて海でのBBQや砂浜花火といった夏本番に向けた青春群像を繰り広げようと躍起になっている人からすると、いささか眠たいことのように思える。
しかし、筆者からすれば「侮ることなかれ」である。
もはや日本で最も罹患人口の多い疾患の1つにまでになった花粉症は、鼻炎A級戦犯のスギだけに留まらないのだ。なんと花粉症、アレルギー性鼻炎の原因となる花粉の数は、およそ60種以上とも報告されている。
樹木花粉でいうと、シラカンバ、ハンノキ、オオバヤシャブジ、ケヤキ、コナラ、クヌギなどがあり、草本花粉ではイネ科のカモガヤ、オオアワガエリ、キク科ではブタクサ、オオブタクサ、ヨモギ、アサ科ではカナムグラがあり、12月、1月の冬季以外にはいずれかの花粉が飛散している状態となっている。
再度繰り返そう……
冬季以外にはいずれかの花粉が飛散しているのだ。侮ることなかれ。
上の表を見てみると、地域によって多少違いが生じていることが分かる。スギやヒノキは春が中心で、秋にも少量の花粉が飛散することがあるのだ。カモガヤやオオアワガエリなどのイネ科は花粉の種類が多いため、春から初秋まで長い間飛散する。また、ブタクサやヨモギなどのキク科とカナムグラは夏の終りから秋にかけて飛散する。
このデータから、自分がどんな季節に症状が出るのかで原因となる花粉を推定できる。つまり、”花粉症が長引く”といった症状は、スギ・ヒノキに由来した花粉だけでなく、その他に由来したものの可能性が高い。
無論、原因花粉を特定するには耳鼻咽候科などの専門の医療機関での検査が必要となるので、正確に把握したい場合は受診することをおすすめする。
また以前、無花粉スギに関する記事も書いたので、さまざまな研究機関が花粉症対策に向けたゆまぬ努力を行っていることも頭に入れてほしい。
【関連記事】
■無花粉スギの苗木量産技術を開発 - 森林総研
花粉ができるまで
では、続いて花粉ができるまでについて解説しよう。鼻を機能麻痺に、目を視界不良に貶めるなどの容疑がかけられているスギ花粉の誕生秘話だ。
スギの雄花は例年、7月から8月にかけてつくられる。この時期の日照時間が長く、気温が高いと雄花の量が多くなる。一方で、冷夏や長雨などの場合は雄花が少なくなり、翌年の花粉量が減少する。雄花は11月ころまでに完成し、中に大量の花粉が作られる。その後、低温や日照時間が短くなることによって活動を休止する休眠に入る。
そして、一定期間低温にさらされることで休眠から覚め、開花の準備期間に入る。この開花準備期間の気温が高い暖冬だと早めに開花し、低温だと開花が遅くなるのだ。
花粉の計測はどのように行っているのか?
では、肝心の花粉量は一体どのように計測しているのだろうか。とても、人間の第六感で計測できそうもないのが所感である。当たり前だと、一蹴されそうだが実際どのような仕組みで計測しているのだろうか。
花粉量の計測は、空中に浮遊している花粉を吸引し、その数をリアルタイムに計測するリアルタイムモニターが日本で使用されている。
大気にレーザーなどの光を当てるとその中の粒子が散乱光を生む。その散乱光の強さを測定して粒子の大きさを決定するのだ。スギ花粉は約30μmである。実際、大気に含まれる粒子はこれより小型のものがほとんどであるため、スギ花粉飛散季節中に大気の中で測定される30μm粒子はほとんど花粉であると断定でき、単位大気中のこの粒子を花粉量としてリアルタイムモニターできる仕組みになっているというわけだ。
今回、この内容の記事執筆に至ったきっかけは、知人からなかなか花粉の症状が治まらないと相談を受けたためである。花粉症でない筆者が何かできるとすれば、これらの内容を世間に広め、夏に向け浮足立ちたい気持ち(ワクワクする気持ち)に向かい風となって襲ってくる長引く花粉症の存在を知ってもらうことであろう。
筆者は青春の群像劇が好きなのである。そのため、長引く花粉によって奪われる物語が、この記事によって少しでも救われると幸いである。