日刊工業新聞社が運営する、モノづくり日本会議と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は5月20日、「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト(DRESSプロジェクト)研究成果報告会」を開催した。
ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクトは、2017年度から2021年度の5年にわたって※1NEDOが実施しており、物流、インフラ点検、災害対応といった分野で活用できる無人航空機などの開発を促進するとともに、社会実装するためのシステム構築および飛行試験を行ってきた。研究成果報告会では、5年にわたるプロジェクトの成果をNEDOや同プロジェクトの採択企業などが報告した。
同プロジェクトを推進したNEDOのロボット・AI部の梅田英幸統括・プロジェクトマネージャー代行は「2020年代の近未来、日本では宅配便取扱量が1年当たり50億個を超す時代を迎え、その宅配便の一部をドローンが都市部上空などを輸送する役割を担う見通しだ」と解説した。
そのうえで、「ドクターヘリなどの有人操縦のヘリコプターとの接触をドローンが確実に回避する技術や、地上を人間が歩いていても、ドローンが安全に運航する技術の開発が不可欠だ」と、同プロジェクトの狙いを解説した。
同プロジェクトは、2021年6月28日に小型無人機に係る官民協議会がまとめたロードマップである「ドローン活用に向けた空の産業革命に向けたロードマップレベル4の実現、さらにその先へ」でまとめられた技術開発目標を達成するための研究が進められたという。
DRESSプロジェクトでは、有人運転のヘリコプター機や飛行機などの運行航路などと連携できる「運行管理システム」の開発や、「衝突回避技術」の開発、「無人航空機に求められる安全基準策定のための研究」などを実施。
NEDOは同プロジェクトの成果の一例として、5月18日に東京大学とイームスロボティクス(埼玉県ふじみ野市)が、佐川急便の協力の下で、自律運行AI(人工知能)を搭載したドローンによる荷物を配送する実証実験を行ったと紹介した。
東京大学とイームズロボティクス、産業技術総合研究所(産総研)、日立システムズは、同じくNEDOが主導する「人工知能技術の社会実装に関する研究開発/サイバー・フィジカル研究拠点間連携による革新的ドローンAI技術の研究開発プロジェクト」を実施しており、人・車両など物体を認識する機能により安全を確保する「自律運航AI技術」、機器故障に起因する異常を検知・判断する「故障診断AI技術」、機器故障時に環境認識により無人地帯を選択して安全に着陸する「緊急着陸AI技術」の開発を行っている。
5月18日の実証では、自律運航AIによって安全性を確保できるという成果を示したという。東京大学らは、今後も飛行実績を蓄積していく予定とのことだ。
梅田英幸統括・プロジェクトマネージャー代行は、「同プロジェクトを通じてドローンが活躍する環境整備が進んだ」としており、NEDOは、こうした研究開発成果を基に日本でもドローンが活躍する社会実装を実現していくとした。
文中注釈
※1:2017年度から2021年度までの5年間で実施された「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」では、その一部が2022年度になっても引き続き実施されている。