降雨時にぶつかる水滴の動きをとらえ、その体積と風速を瞬時に同時計測できるセンサーを開発した、と大阪公立大学などの研究グループが発表した。新センサーは軽量で自在に曲がり、簡単に作れる。データの分析には機械学習を活用した。将来的にはぶつかる水滴の頻度とその体積から降雨量を推定し、局地的な豪雨マップなどへの応用を期待している。
新センサーの大きさは1センチ四方で厚さ0.3ミリ。曲げられるシリコーン製のゴム上に多層のグラフェンを転写した。体積0.04ミリリットル以下の水滴を風速5メートル以下の条件で分析できる。グラフェンはポリイミドフィルムにレーザー照射して炭化した。表面処理の違いにより、ぶつかった水滴が飛び跳ねたり分裂したりすることが、高速カメラによる撮影で明らかになった。
この水滴の振る舞いによる電気抵抗の変化を学習データとして、時系列情報処理を得意とする機械学習の枠組みである「リザバーコンピューティング」を用いて解析したところ、1つのセンサーから得られた抵抗変化をもとに予測した水滴の体積と風速が実測値とよく合うことが分かった。測定誤差は20%程度で、学習データを増やして精度の向上を目指すという。
シリコーンゴムは柔軟なため、センサー自体を曲げたり伸ばしたりすることができ、傘のほか屋根、自動車などに貼付することが可能。さまざまな環境で局地的な雨と風に関する膨大な情報を安価に取得し、これを処理することで自然災害の防止などに役立てることが期待される。
研究グループを率いる大阪公立大学大学院工学研究科の竹井邦晴教授は「1つのセンサーから1つの出力を得るという一般的な概念ではなく、『1センサーから多出力』を実証できた。さまざまな IoT 分野でシステムの簡易化や低消費電力化につながる重要な技術だ。今後は、実用化を目指した産官学連携にも積極的に取り組みたい」と話している。
研究グループは竹井教授と東京大学大学院情報理工学系研究科・同大学次世代知能科学研究センターの中嶋浩平准教授らで構成。研究論文は5日(日本時間)に国際学術誌「アドバンストマテリアルズ」に掲載され、大阪公立大学などが10日に発表した。
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