IDC Japanは5月26日、「セキュリティソフトウェア市場」「セキュリティアプライアンス市場」「セキュリティサービス市場」から成る、国内の情報セキュリティ市場予測を発表した。

「セキュリティソフトウェア市場」「セキュリティアプライアンス市場」を合算した「情報セキュリティ製品市場」について、2021年は前年比16.0%増の4360億1500万円になったと同社では推定する。背景には、企業と消費者のセキュリティに対する警戒感が高まり、エンドポイントセキュリティやアイデンティティ、デジタルトラスト、ネットワークセキュリティへのニーズが急速に高まったことが挙げられる。

  • 「情報セキュリティ製品市場」の市場予測(2020年~2026年)、出典:IDC Japan

2021年はオフィス勤務からリモート勤務への移行や、商取引やコミュニケーションのハイブリッド化が進み、オリンピックなど国内外での大規模イベントの開催やロシア・ウクライナ戦争に乗じてハッカーやサイバー犯罪集団が暗躍した。また、政府によるデジタル化推進や改正個人情報保護法、GDPR(General Data Protection Regulation)、中国で初めて個人情報保護法が施行されるなど、デジタル情報に対するプライバシー保護規制が国内外で強化された1年だった。

そうした市場環境の変化を受けて、2021年のセキュリティソフトウェア市場は前年比17.2%増の3703億5000万円(売上額ベース)になったと同社は推定する。同市場はセキュアなアクセスコントロールに対するアイデンティティ、デジタルトラストや高度サイバー攻撃に対するエンドポイントセキュリティ、クラウドサービスへのセキュリティに対する需要が堅調に増加し、2021年~2026年における年間平均成長率(CAGR)は4.6%、2026年に4637億3900万円に拡大すると同社は予測している。

また、2021年の国内セキュリティアプライアンス市場は、前年比9.5%増、656億6600万円(売上額ベース)になったとIDCでは推定する。2021年の同市場は、VPN(Virtual Private Network)機器の成長が減速したものの、「Emotet」の活動再開による電子メールを経由したセキュリティ被害が2021年後半に再拡大し、メッセージングセキュリティを含むコンテンツセキュリティ関連市場への需要が拡大したという。このため、セキュリティ投資はオンプレミスからクラウド環境へのセキュリティ対策に向けられると考えられ、国内セキュリティアプライアンス市場の2021年~2026年におけるCAGRは0.7%、2026年には680億600万円になると予測している。

一方、セキュリティサービス市場は、国内外の大規模イベントをねらったサイバー攻撃によるセキュリティ被害が拡大したことで、マネージドセキュリティサービス、教育、トレーニングサービスを中心に需要が拡大したという。その結果、2021年の同市場は、前年比6.9%増の2963億2500万円(支出額ベース)になったと同社は推定する。

同市場について、同社はクラウド環境に対するセキュリティコンサルティングサービスやセキュリティシステム運用管理サービスへの需要が高まるとみており、2021年~2026年のCAGRは3.1%で推移し、2026年には3445億9800万円に拡大すると予測している。