富士通の半導体事業の統括会社である富士通セミコンダクター(FSL)は、FSLの100%子会社である富士通セミコンダクターメモリソリューション(FSM)の株式を、国内の投資ファンドであるティーキャピタルが設立する新会社へ譲渡することでティーキャピタルと合意し、5月26日に契約を締結したと発表した。

今後両社は、2022年9月末をめどに株式の譲渡を目指すとしている。なお、FSLは議決権30%の出資を当面継続し、FSMのスムーズな独立移行を支援するという。

世界的な再編が続く半導体業界では昨今、新型コロナや国際的な社会情勢の悪化により、原材料の価格高騰や半導体供給のひっ迫が起きており、グローバルベンダーとの競争もますます激化している。

そんな中FSLは、2020年3月にシステムメモリ事業を行う100%子会社としてFSMを分社化。これにより、意思決定の迅速化や効率的な事業運営、事業責任明確化に向けた体制を構築したという。

そして今般、FSLは、次世代システムメモリLSIの開発や新たなソリューションビジネスへの展開を加速させるため、FSMの株式を譲渡することで同社の独立性を一層高めるという経営判断を下したという。

これによりFSIは、これまで培ってきたFeRAM(強誘電体メモリ)とReRAM(抵抗変化型メモリ)を中心とするシステムメモリLSIへの技術力を最大限に活用した事業展開が可能になるとしている。

一方のティーキャピタルは、1990年代より優れた事業基盤を有する国内企業を対象とした投資活動を展開しており、複数の製造業や大企業グループからの独立・再編型投資案件に取り組んだ実績を持つ。

同社はFSMの開発・設計能力や安定性の高い事業展開を高く評価しており、今後の成長市場への展開による拡大ポテンシャルがあると考えているという。

今後は過去の投資実績に基づく知見に加え、FSMの強みや特徴を活かしこれまでの事業戦略を後押しすることで、FSMの企業価値向上を目指すとしている。