横浜国立大学(横浜国大)、名古屋工業大学(名工大)、岡山県立大学、京都大学(京大)、立命館大学の5者は5月24日、不規則岩塩型ニッケル系材料を開発し、実験的・理論的に反応機構の解析を行った結果、同材料が高エネルギー密度なリチウムイオン電池(LIB)用材料の開発およびLIBのさらなる高性能化につながる、従来材料とは異なる酸素を利用しての高効率・高電圧を示すことに成功したと発表した。
同成果は、横浜国大 工学研究院の藪内直明教授、名工大大学院 工学研究科 工学専攻(生命・応用化学領域)の中山将伸教授、岡山県立大 情報工学部 情報通信工学科の野田祐輔准教授、京大 化学研究所の島川祐一教授、同・菅大介准教授、同・後藤真人助教、立命館大 総合科学技術研究機構の太田俊明上席研究員を中心に、豪州ニューサウスウェールズ大学、韓国科学技術院、BASFジャパンの研究者も参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行する化学に関連する分野全般を幅広く扱う学際的な学術誌「ACS Central Science」に掲載された。
リチウムイオン電池のさらなる活用に向けた高性能化が求められており、その実現手段の1つが、より高性能な正極材料の実現とされる。中でも従来の遷移金属イオンではなく、酸素の酸化還元反応を利用する新しい電池材料は、エネルギー密度の向上による高容量を実現できるとして期待されているという。
そうした候補材料の1つに、リチウム過剰型マンガン系層状材料があるが、課題は充放電時のエネルギー効率が悪く、作動電圧がやや低いこととされている。また、このような酸素の反応を安定化させるためには、マンガンの存在が必要となる。