パナソニックコネクトは5月24日、2019年1月に開設した顧客との共創施設「カスタマーエクスペリエンスセンター(CXC)」をリニューアルし、メディア向けに初公開した。
同社は2021年に、サプライチェーンマネジメント事業などを手掛ける米ソフトウェア大手のブルーヨンダーを8633億円で買収した。ブルーヨンダーはAI(人工知能)を活用し、需要・供給の変化をリアルタイムに把握し、現場作業の最適化や省人化を図るサービスを製造業や小売業向けに展開している。顧客は、食品・日用品大手の英ユニリーバなど欧米企業を中心に世界で3000社を超えている。
今回リニューアルしたCXCは、パナソニックコネクトが持つローカル5GやプライベートLTEなどの無線ネットワーク技術、顔認証技術、センシング技術と、それらの技術から得られる現場データを取り込んだブルーヨンダーのSaaSなどを体験でき、さなざまな実証や検証が行える施設。
同施設は、パナソニックコネクトの映像・音響機器システムを活用した「プレゼンテーションエリア」、さまざまなデモンストレーションを公開する「展示エリア」、ディスカッションを行う「共創エリア」の3つからなり、今回のリニューアルでは特に展示エリアが拡充された。
強化された展示エリアでは、サプライチェーンをはじめとした現場で課題が起こるシーンを再現し、「可視化」、「標準化」、「最適化」を体感できるような環境を構築。例えば物流現場では、倉庫で配送予定の荷物ピッキング作業において、日々の荷物量や業務量の変動が大きいため、カゴ台車に積載する最適な荷物量の予測ができず、同じタイミングで配送する荷物がそろうまで待ち続けるといった現状がある。
また、物流業では配送トラックの台数や積載量のバッファ(ムダ)が大きいため、積載率が高くなるまでトラックが長時間倉庫の前で待機する必要があるという。もしくは、低い積載率のままトラックの台数を増やして配送しなくてはならない。
そこで、展示エリアでは、上記の課題の解決につながるソリューションをデモ形式で紹介。積載量の最適化では、まず、対象物の距離を取得するTOF方式3Dセンサーでカゴ台車の積載容積率を可視化する。カゴ台車が積み込まれるトラックの積載量も可視化されることで、積載率の改善による配送効率の向上につなげる。
配送計画を最適化して動態を管理するソリューションも展示されている。同ソリューションは最適な配送計画を作成し、トラックの動態管理で配送支援・実績管理を実施する。配送におけるPDCAを回すことで積載率の向上や労務費の削減につなげるものだ。
展示エリアはほかにも、センシング、AI画像解析などの要素技術や棚の可視化ソリューションや、来店客を可視化するソリューションなどを、想定されるシチュエーションに合わせて紹介している。
そして、それらの現場データを活用するブルーヨンダーのソリューションも展示。「注文量が読めないため、先回りして余分に生産する」「注文されたものをその都度運んでいる」「売れるタイミングで店頭に商品がないと困るため、必要数よりも多めに発注する」といったサプライチェーン全体で起こりうる課題となるシーンを想定し、各現場の最適化を提案する。
同日開催された記者会見に登壇した、パナソニックコネクト 現場ソリューションカンパニー エグゼクティブコンサルタント エバンジェリストの一力知一氏は、「実現したいことは『必要なものが、必要な時に、必要な量ある』ということ。ブルーヨンダーは『計画』、パナソニックコネクトは『実行』という立場で、現場に存在するあらゆる無駄を省き、最適化を推進していきたい」と意気込んだ。