アイリスオーヤマは5月24日、新たな社会課題の解決に向けて「エアソリューション事業」に新規参入することを発表した。その第一弾として、空間だけでなく壁や机上などの物体表面の菌やウイルスまで除菌可能な大規模空気清浄化の技術を採用したデバイス「PlasmaGuard PRO アイリスエディション」を同日より販売する。
同製品はプラズマガードLLC社の大規模空気清浄化技術を採用し、独自の低温プラズマ放電技術によって発生する活性酸素や活性窒素を含むイオンによって菌やウイルスを99.9%除菌可能だという。また、空調ダクトに本体を取り付けて建物の空調システムと連動することで、同製品1台で840立方メートルまでの除菌が可能となる。PM2.5の除去にも対応する。
同社によると、今回同製品が採用しているプラズマ放電技術により発生する活性酸素や活性窒素はイオンの寿命の長さが特徴だという。
同社の執行役員でありBtoB事業グループ メーカー本部の本部長を務める本所翔平氏は「一般的な空気清浄機が発するイオンは寿命が短く、除菌効果は機器の周囲に限定される。一方『PlasmaGuard PRO アイリスエディション』のイオンは寿命が長く活性化状態のイオンが広範囲に広がるため、効率的な空間除菌効果を発揮する」と説明していた。
付属するPMセンサーは空気中の微粒子濃度を測定可能だ。センサーにより測定したデータはスマートハブを通じてクラウド上に保存可能。ここで集めたデータはスマートフォンやPC端末などから確認可能で、空間除菌効果を可視化できる。また、デジタルサイネージやディスプレイに投影してオフィス来訪者への情報発信にも使えるという。
また、新型コロナウイルス感染症の流行後に増加した、外気の取り込み量を増加するような感染症対策と比較すると、空気の温度管理が不要となるため空調設備の負荷も軽減できるようだ。HEPAフィルターの交換による廃棄物の処理も抑えられ、環境保全にも寄与するソリューションである。
同製品の設置にあたっては既設の空調ダクトに本体を設置可能なため、新たな空調設備の入れ替えなどは不要。施設を長期間閉鎖することなく導入できる利点を持つ。
なお、同製品の除菌効果は米大手検査機関にて実証しているという。SARS-CoV-2のデルタ株に対して、空間除菌については99.997%、机上などの表面除菌については99.994%の除菌が可能であると示されたとのことだ。
アイリスオーヤマは2011年に発生した東日本大震災を契機に、節電需要への対応として法人向けLED照明の展開に着手した。2015年からはSDGsに資するための省エネルギーソリューションや、労働人口不足に対応するためのAI(Artificial Intelligence:人工知能)ソリューションの開発にも取り組んでいる。
さらに、2020年に急速に進行した新型コロナウイルスへの対策として省人化や非接触を促すためのロボティクス事業にも参入している。コロナ禍において、改めて人や生物にとって空気が重要であると再認識する機運が高まったことから、同社はエアソリューション事業への参入に踏み切ったようだ。
エアソリューション事業は今後、自動清掃ロボットやグループ会社であるアイリスチトセが展開するオフィス家具などと連携し、オフィス空間全体でウェルネスな働き方の支援を視野に入れている。事業計画としては2022年度に20憶円、2024年度には100憶円の事業規模を目指すとのことだ。