東芝は5月23日、インフラ点検向けに、現場での学習が不要で、点検個所の正常画像を数枚用意することで、ひび・さび、水漏れや異物の付着、部品の脱落などの発生頻度が低く未学習の異常も高精度で検出するAI(人工知能)を開発したと発表した。同AIの2023年度中の実用化に向け、同社はシステム開発および精度向上を目指して研究開発を進めていく方針だ。
今回、同社が開発したAIでは、点検画像と正常画像の比較を事前学習で学習済みの深層モデルの特徴量を用いて行うため、従来必要だった現場での学習が不要だという。
現場での異常個所の検出においては、まず、正常画像と点検画像の特徴量を導出する。次に、学習済みの深層特徴量の中から似たものを自動で選択し、これらの深層特徴量を比較し差分をとることで、異常(変状)部分を検出する異常スコアマップを計算する。これにより、すでに学習済みの深層モデルを用いるため、現場ごとに画像を収集して学習する必要がなく、各点検現場において即座に適用が可能だ。
また、同社独自の補正技術により、点検画像の撮影位置や角度が正常画像とずれていても高精度に異常個所の検出が可能で、正常であるにも関わらず特徴的なパターンを異常として検出してしまう過検出も抑制するとしている。同社によると、同技術は公開データセットによる評価で91.7%の精度を達成したとのことだ。
同AIを活用することで、点検員の危険や移動の負担が伴うような山岳地の鉄塔、橋梁の高架下、法面(のりめん)、太陽光パネルの裏面など、点検作業の省力化が求められながらも現場の画像が少ないために、これまで導入が困難だった現場へのAIの適用が期待できるという。