日本工学アカデミー(東京都千代田区)は2022年5月17日に「第4回政治家と科学者の対話の会」を開催し、「スタートアップ創出・成長支援の課題と政策」について議論した。

同会の中で、東京大学大学院工学系研究科で主に人工知能(AI)技術の研究開発・人材育成・社会実装などを行う松尾豊教授が講師の一人として出席し講演を行った。

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松尾教授は講演の中で、「高等専門学校生が持つものづくり手腕にデープラーニング(Deep Learning:DL、深層学習)を活用してその事業性を競う“高専DCON(全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト)”を2019年度から開催し、その受賞チームが実際に起業したケースが出始めた」と、その成果を解説した。

  • 2022年度の高専DCONのWeb画面

    2022年度の高専DCONのWeb画面(引用:JDLA引用)

松尾教授は2017年度から日本ディープラーニング協会(JDLA:東京都港区)の理事長を務めている。JDLAは、DLを事業の核とする企業が中心となってDL技術を日本の産業競争力につなげていこうという意図のもとに設立されたものだ。

そのJDLAが高専DCONを主催しており、松尾教授は「大学生・大学院生に比べて、高等専門学校の学生は実際にものづくりのスキルを学び、技術を習得している。高専DCONは、ものづくりのスキルを持つ高専生にDLを活用したビジネスプラン・事業計画を企画させ、その事業性を競うコンテストだ」と紹介した。

高専DCONの受賞チームの中で、実際にスタートアップ企業を起業したチームは、2019年度に最優秀賞を受賞した長岡工業高等専門学校(新潟県長岡市)のチームが提案した「工場のアナログメーターの自動読み取りシステム」を基にしたインテグライ(integrAI:新潟県長岡市、2020年7月設立)と、同じく2019年度に2位に輝いた香川高等専門学校(香川県三豊市)のチームが提案した「送電線点検ロボット」を基にした三豊AI開発(香川県三豊市、2020年8月設立)、2020年度に優勝した東京工業高等専門学校(東京都八王子市)のチームが提案した「自動点字相互翻訳システム」を基にしたTAKAO AI(東京都八王子市)の3社が先駆けとなっている。

  • インテグライ(integrAI)

    インテグライ(integrAI)(出典:インテグライ)

高専DCONは、2019年度には12校の高専から18チームが参加し、2020年度には20校・36チーム、2022年度には29校・43チームが参加し、その提案力を競い合った。

高専DCONでは各提案に対して、評価委員として、先輩の起業家(企業経営者)が事業化案を事業性の金額で表示し、さらにVC(ベンチャーキャピタル)の役員が成長性などの評価額を表示して、その可能性を具体的に評価している。

例えば、2022年度に経済産業大臣賞を受賞した大島商船高等専門学校(山口県周防大島町)が提案した、キクラゲ採取事業に対してDLとVR(仮想現実)、ロボットを組み合わせたソリューション「New Smart Gathering」は「起業評価額が10億円、投資額が3億円との成績を上げた」という。