既製品とは異なり、自分自身の体型に合った1着を購入できるオーダースーツ。憧れる人が多い一方で、「高価」「製作に時間がかかる」といったイメージを持つ人も少なくない。
そんなオーダースーツに革新をもたらしたのがFABRIC TOKYOだ。店舗で採寸を行い、サイズをクラウドに登録することで、いつでも自分の体型に合ったオーダースーツを製作できるD2C(Direct to Consumer)サービスである。
従来のオーダースーツの概念を打ち破った同社の好調の背景には、徹底したデジタルマーケティングとデータ活用がある。
4月19日に開催された「ビジネス・フォーラム事務局×TECH+フォーラムDX Day 2022 Apr.ありたい姿を改めて定義する」にFABRIC TOKYO 取締役COOの三嶋憲一郎氏が登壇。同社が実践する「リテール・トランスフォーメーション」について語った。
新たなビジネスモデルを実現した「スマートオーダー」の発想
従来のオーダースーツの課題として三嶋氏が挙げるのが「敷居が高い」「既製品よりも価格が高いイメージがある」「時間がかかる」という3つのネガティブイメージだ。逆に言えば、これらのイメージを払拭できればオーダースーツの販売は大きく伸びる可能性を秘めている。つまり、「もっと気軽に」「適正な価格で」「いつでも買える」というイメージへの転換である。そのためにFABRIC TOKYOが開発したのが、「スマートオーダー」というシステムだ。
「スマートオーダーとは、消費者が店舗で1度採寸を行えば、その後はいつでもインターネットからオーダースーツを注文できるサービスです」(三嶋氏)
オーダーできるのはスーツだけでなく、シャツやジャケット、チノパンなど幅広いビジネスウエアに対応している。店舗は関東、関西、名古屋、福岡を中心に展開しており、主要都市・主要駅は一通り網羅しているという。顧客はオーダーの度に来店する必要がないため、店舗のない地域在住であっても購入機会を得やすいという点も特徴だ。
スマートオーダーは、従来のアパレル業界とは異なるビジネスモデルの構築を可能にした。
その1つが「売上が店舗数に依存しない」ことだ。FABRIC TOKYOはユーザーリテンションが高く、大半がオンラインで完結するため、売上を増やすために店舗数を無尽蔵に増やす必要がない。一定の店舗数があれば高い売上成長が見込める仕組みになっている。
また、店舗は採寸に特化しており、在庫をほぼ持たない。そのため、在庫損失のリスクが少なく、店舗面積を抑えられるといったメリットもある。
結果として、FABRIC TOKYOでは低コストでの店舗運営が可能になっており、例えば、賃料に対する売上高の倍率は、競合大手が約10倍前後なのに対して、同社では30倍にも達しているという。
こうした新時代のアパレルビジネスを支えるのが、FABRIC TOKYOが掲げる「リテール・トランスフォーメーション」である。