米国のバイデン大統領は5月20日午後、韓国を訪れ、平澤市のSamsung Electronics平澤事業所にて、韓国の尹錫悦大統領とともにSamsungの李在鎔副会長の案内で製造装置搬入・据付中の最先端の半導体クリーンルームを視察。米国製(Applied Materials、Lam Research、およびKLA)の製造装置の前で据え付け作業を行っている作業員から説明を受けたという。

クリーンルーム視察後にバイデン大統領は、Samsung社員や多数の来賓を前に演説し、視察したばかりのSamsung最先端半導体ファブに対し、「この工場がどのようにして世界で最も先進的な半導体チップを製造しているかを目の当たりにした。まさに驚異である。最先端の半導体を製造しているのは世界で3社しかないが、ここはそのうちの1社である。この工場は、米韓両国間のイノベーションにおける緊密な絆を反映している。これらのチップを製造するために使用される技術と機械の多くは、米国で設計および製造されたものである。 私たちのスキルと技術的ノウハウを統合することにより、両国にとって重要であり、世界経済に不可欠なチップの生産を可能にしている」とし、同工場が米韓の協業の成果であることを強調した。また、2021年に米韓首脳会談が行われた際に文大統領(当時)が手土産として持参した「Samsungが米テキサス州に最先端(3nmプロセス)半導体工場建設」のための170億ドル投資についても触れ、「Samsungが米国テキサス州テイラー市に170億ドルを投じて、先ほど見学したのと同様のもっとも先進的な半導体チップを製造する施設を建設することに感謝する。この投資により、テキサス州で3,000の新しいハイテク雇用が創出され、Samsungの米国での既存の2万の雇用に追加される。Samsungが、韓国と米国の間の生産的なパートナーシップを拡大し続けてくれていることに感謝する」と、Samsungへの謝意を述べた。

そのうえで、価値観を共有する同盟国が、サプライチェーン(供給網)構築で協力する重要性を訴え、「私たちの経済と国家安全保障が、私たちの価値観を共有していない国に依存しないように、私たちの重要なサプライチェーンを確保する必要がある。これを実現するための重要な要素は、韓国のように私たち(米国)の価値観を共有する親密なパートナーと協力して、同盟国やパートナーから必要なものをより多く確保し、サプライチェーンを強化することである」と同盟国の協力体制の確立の重要性を強調した。

韓国の尹大統領が米国企業の誘致と経済安保同盟希望

一方の韓国の尹大統領は「半導体が我々の未来を左右する国家安保資産であるので、可能な限り支援する」とする一方で、「米国の先端素材・装備(半導体製造装置と付帯設備)・半導体設計企業が、韓国へ投資できるように支援していただければと思っている」と述べたほか、「米韓関係が先端技術と供給網協力を基盤した経済安全保障同盟として発展することを心から願っている」とバイデン大統領に伝えた。

レモンド商務長官が半導体工場のさらなる米国誘致に意欲

今回のバイデン大統領のアジア歴訪に同行しているレモンド商務長官は、ホワイトハウスのTwitterにて、「Samsungの先端半導体ラインの視察の際に、多くの米国製装置を目のあたりにして、これこそ米韓の半導体技術の素晴らしい協業だと感じた。今、私はバイデン大統領とともに、超党派による半導体強化法案を議会で成立させようと努力している。もしもこの法案が成立すれば、先ほど視察したような半導体工場をもっと米国に誘致できるようになる」と述べている。

今回、バイデン大統領がレモンド商務長官らを伴って、Samsungの先端半導体工場を訪問したのは、中国に依存しないサプライチェーン構築にとって韓国、とりわけSamsungからの半導体安定供調達の役割を重視しているためであろう。Samsungをはじめとする韓国半導体勢の中国への投資や拡販をけん制する狙いも透けて見える。