今世紀の国内の噴火を中心とした火山灰のデータベースを、産業技術総合研究所が構築しインターネット上に公開した。顕微鏡画像や噴火様式、火山活動などのデータを、世界で初めて詳しく収録したという。噴火が起きた際、過去の似たタイプの火山灰を速やかに検索し、当時の噴火の仕組みを把握することで、状況理解や活動予測に役立つ。災害の軽減に役立てる狙いがある。
噴火で遠くまで飛び散る火山灰は、火山活動を判断するための貴重な手掛かりとなる。色や形状、種類の組み合わせなどから、マグマが関与しているかどうかや、マグマの状態、爆発の様式などを推定できる。ただ従来、過去の火山灰の特徴を統一基準でまとめたデータベースがないため事例を迅速に調べられず、火山活動の予測が進まないという問題があった。
そこで産総研の研究グループは、これまでの研究や、気象庁火山噴火予知連絡会のメンバーとして蓄積してきた火山灰のデータを整理。今世紀に起きた国内の噴火をほぼ網羅したデータベースを構築した。国内外の38火山で発生した約100回の噴火で生じた約1000件の火山灰の試料について、計約1万600枚の画像を収録した。海外や20世紀以前の一部の噴火の火山灰も含んでいる。
試料ごとに複数の光学顕微鏡画像を、噴出日や噴出地点、採取地点、採取状況などの情報とともに掲載。地図も表示できる。一部の試料は、粒子の表面の微細な構造が分かる電子顕微鏡画像、研磨断面の顕微鏡画像、化学組成分析のデータも含む。
火山灰の粒子の特徴を収録したデータベースは国内唯一で、海外にもほとんど存在しないという。今後も試料を集め、より多彩な検索を可能にするなど改善していく。
研究グループの産総研活断層・火山研究部門大規模噴火研究グループの松本恵子研究員(火山岩岩石学)は「気象庁などの専門家が火山活動を判定するにあたり、地震計や地殻変動観測、火山ガス観測などの情報に加え、物質科学的な資料として役立つのではないか。典型的な火山灰に限らず、小規模の噴火まで含め網羅的に収録したデータベースはなかった。主に防災目的を意識してはいるが、火山学研究、地学教育などで自在に活用してほしい」と述べている。