東京保健医療専門職大学と東京工科大学(工科大)は、従来の酢酸ウランと鉛溶液の二重染色法に代わる、安全性、コスト、扱い易さなどに優れた新たな電子顕微鏡試料の染色法を開発したと発表した。
同成果は、東京保健医療専門職大 リハビリテーション学部の佐々木博之教授、工科大 応用生物学部の松井毅教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
酢酸ウランを用いた生体試料の電子顕微鏡染色技法は、1958年に報告され、その簡便さと最適な染色結果によって、長きにわたって世界中の電子顕微鏡での観察で活用されてきたという。しかし近年は、核兵器に使用されることから、ウラン化合物の使用や入手、貯蔵、廃棄に関する国際的な規制が厳しくなりつつあるという課題があった。
こうした背景から、生物学的研究分野において、酢酸ウランに代わる染色法が長く待望されるようになってきており、これまでもいくつか提案されているが、いずれも効果的な代替手法には至っていないという。そこで研究チームは今回、電子顕微鏡の超薄切片法において、酢酸ウランの代替となる安全で取り扱いの容易な染色法を開発することを目的に、市販のさまざまな光学顕微鏡用色素を検討することにしたとする。
その結果、光学顕微鏡の一般的な染色剤として用いられている「マイヤーヘマトキシリン」と鉛溶液の二重染色でも、さまざまな組織・細胞において従来の酢酸ウラン溶液と鉛溶液の二重染色と同等の染色性を示すことが確認されたという。
具体的には、マイヤーヘマトキシリン-鉛染色法により、核クロマチン、細胞膜構造、リボソーム、グリコーゲン、脂肪滴、細胞接着装置、細胞骨格系などのほかの細胞小器官が、高いコントラストで染色されていることが見て取れたとする。特に、すべての試料で、細胞膜の染色性が良いことがわかったという。