ServiceNow Japanは5月19日、Now Platformを活用した「自治体の職員向けDX支援ソリューション」を紹介する記者説明会をオンラインで開催した。
住民や事業者に提供するサービスの品質向上に向けたデジタル活用が注目されているが、デジタル庁が掲げる「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」の実現には、自治体の職員の業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)が重要になる。
現在、ServiceNow Japanは自治体に対して、各業務に合わせた特化型のSaaS(Software as a Service)と併せて、デジタルワークフローの統合基盤としてNow Platformを提供している。
直近では、2022年1月に横浜市の予算・財務情報管理システムの構築を日立製作所とともに開始した。
ServiceNow Japan サービス営業統括本部 公共営業本部 営業本部長の野澤さゆり氏は、「従来のシステムありきの構成では、自治体の職員がメールや電話、エクセルファイルなどを利用することで、分断したシステムや業務をつなげていた。だが、住民や事業者の申請から、自治体内の受付、承認、目的別のシステムへの反映まで、ワークフロー全体をデジタルプラットフォームでつなげることができれば、ユーザー体験の向上と業務効率化が実現できるはずだ」と述べた。
説明会では、自治体におけるNow Platformの実装事例として、「文書管理」「予算管理」「住民向けサービス」の各業務におけるユースケースが紹介された。
文書管理では、各種問い合わせや起案の申請者から承認者まで、エンドツーエンドで公文書をデジタル管理できるワークフローの実装を自治体で進めている。職員ポータルからすべての申請をシステム上で完結できるうえ、既存の文書管理システムと連携することで承認された書類をPDFデータで保管したり、保管先のアドレスを申請フォームで管理したりして、文書を検索しやすくできる。
申請や承認は自動的に集計されるため、時間がかかっている承認や滞留している差し戻しをダッシュボードで可視化して、次のアクションにつなげることもできる。また、申請者が承認者を任意に指定するような設定も可能だ。
予算管理では、横浜市のプロジェクトが紹介された。同市では、中期計画の策定から予算編成、予算執行、決算、行政活動の評価といった行政活動における一連の業務を、単一のダッシュボード上で実施できるワークフローの整備を進めている。
申請予算のステータス管理や案件集計の自動化、財政部門によるレビュー、経営層によるレビュー結果の確認とシミュレーション、プロジェクトの実行状況の記録のダッシュボードへの統合とともに、事業評価と中期計画の連動などの実現も目指しているという。
住民向けサービスのユースケースでは、住民向けに提供されている既存のサービスとのAPI連携事例として、アスコエパートナーズが提供する市民申請のサポートサービス「手続きナビ」と「申請サポートプラス」を使って、小児医療費助成の申請を行った際のデモンストレーションが行われた。
まず、両サービスを使って申請をすると、申請者(自治体の住民)宛てに申請内容の確認メールが届く。
申請者が確認のためのURLをクリック(タップ)すると、ServiceNow独自のAPI接続用コネクタである「Spoke」を経由してNow Platformで作成した画面にアクセスする。
内容確認が済んだら、再度、別のSpokeを経由してJPKI認証サービスや電子決済サービスとAPI連携するので、申請者はURLへの一度のアクセスでマイナンバーカードによる本人確認や手数料支払いまでも行える。
本人確認と手数料支払いが済むと、担当課(福祉課)の職員が共通で利用するServiceNowの画面上で、申請内容の確認や審査部署への提出、上長の承認までを実施できる。承認が済んだら、申請内容を文書管理システムとAPI連携し、ストレージに保管することもできる。
住民からの申請内容に記入不備などがあった際は、従来だと担当職員が電話などで連絡するという対応をとることが多い。Now Platformでは、住民に差し戻しをメールなどで通知し、システム内で修正・再申請してもらえるような設計を実装することも可能だという。
各ユースケースを解説したServiceNow Japan サービスSC統括本部 公共SC本部 アドバイザリー ソリューション コンサルタントの山田一也氏は、自治体の業務をデジタル化することのメリットとして「IT管理の効率化」を挙げた。
「システムは異なるのに機能が重複しているケースは多くある。デジタルプラットフォームの導入により、システムの開発者や管理者は、それぞれのシステムごとにかかっていた要件定義、開発、運用のコストと時間を圧縮することができる。また、標準化された要件を再利用できるので、新しいシステム導入時にも、IT運用管理のガバナンスを効かせることができる」(山田氏)